《本記事のポイント》

  • 米中会談を控える中、米中閣僚対話で両国の対立が浮き彫りに
  • 一方で、米財界人がトランプ政権の対中強硬姿勢に抵抗
  • 安全保障や国際正義よりも経済を優先する日本は変わるべき

11月末のG20首脳会議での米中首脳会談を控える中、両国が一歩も引かない姿勢を見せている。

米中の閣僚による「外交・安全保障対話」がこのほど、ワシントンで行われた。対話終了後、アメリカ側からポンペオ国務長官とマティス国防長官が、中国側から外交トップの楊潔篪(ヤン・ジェチー)共産党政治局員と魏鳳和(ウェイ・フォンフォー)国務委員兼国防相が出席し、記者会見を行った。

主な争点となったのは、中国による南シナ海での軍事拠点化および台湾への外交圧力、そして、中国国内で行われているウイグル人への弾圧だ。

ポンペオ氏の「中国の行動と(人工島の)軍事拠点化を引き続き懸念している」というけん制に対し、楊氏は自国の領土に必要な防衛措置を置くのは正当な権利だと主張。その上で、「アメリカの方が南シナ海に軍艦を派遣するのをやめるべきだ」と反論した。

また、ポンペオ氏が他国に圧力をかけて台湾との断交を迫る中国の外交手法を批判すると、魏氏は「我々はかつてアメリカが南北戦争でしたように、いかなる犠牲を払ってでも祖国統一を維持する」と述べ、台湾問題で一切譲歩しない姿勢を示した。

さらに、中国国内で行われている人権問題についても、楊氏は「中国の内政であり外国に干渉する権利はない」とした。

両閣僚とも「対立は望まない」としながらも、結果的に米中の対立が浮き彫りとなった形だ。

中国の影響下にある米財界人

トランプ政権が中国に一歩も引かない姿勢を示す一方で、米財界は対立を避けたいと考えている。

9月には、全米小売業協会(NRF)や全米家電協会(CEA)、全米漁業協会(NFI)など86の業界団体が、「Americans for Free Trade(自由貿易を追求する米国人の会)」として業界横断的な組織を立ち上げ、関税反対のロビー活動に力を注いだ。

こうした中国との経済関係を重視する声に対して、トランプ政権は対中関税の重要性を訴えかけている。

閣僚対話の同日、対中強硬派のナバロ米大統領補佐官がワシントンで講演を行った。

講演でナバロ氏は、中国政府の影響を受けたアメリカのグローバリストが、対中関税を止めるようホワイトハウスに働きかけているとし、金融機関幹部を「無給で働く外国の工作員だ」と、激しく批判。中国政府による不当な為替操作や知的財産の侵害に言及し、中国との通商交渉での合意を急ぐべきではないと警告した。

中国という巨大マーケットから利益を得てきた財界人に、目先の利益を優先して独裁国家の軍拡を助長するのか、それとも「自由、民主、信仰」を奉じる大国として中国の覇権を止めるかという選択が迫られている。

日本は「経済至上主義」を卒業すべき

ホワイトハウスの方針に財界から抵抗が起きているアメリカに対し、日本では首相自ら"財界の抵抗"をけん引している。

安倍晋三首相は、10月の訪中で、約3兆4000億円の規模で通貨スワップ協定を再開することを合意。500人以上の日本の財界人を引き連れ、中国政府による一帯一路構想への協力に意欲を示した。

目先の利益が手に入れば、中国が軍事拡張を続け他国を圧迫していても、自国民を蹂躙していても、関知しないということだろうか。

「安全保障」や「国際正義」より「経済」を優先させる日本の政治に、変革が求められている。

(片岡眞有子)

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