日本の国防上、最も重要な場所に位置する台湾。中国が2020年ごろまでに併合したいと狙っている台湾の運命は、日本人にとっても他人事ではない。

中国の軍事的な脅威を肌で感じている米軍や国防当局は、これまでも南シナ海や東シナ海における米軍の中国への強硬策を進言してきた。しかしオバマ政権は、アジアで「強いアメリカ」の威信を十分に示すことはできなかった。

トランプ新政権下における対台湾の政策はどうなるのだろうか。トランプ陣営の参謀はこのほど、米誌「フォーリン・ポリシー」に寄稿した文章の中で、台湾に対する武器の全面的な供与の必要性を訴えた。台湾の中央通訊社などが報じた。

「トランプ政権は台湾に対して友好的」

記事によると、台湾重視の提言を行ったのは、米カリフォルニア大アーバイン校のピーター・ナバロ教授と、米下院軍事委員会の海軍力小委員会委員長のアドバイザーを務めたアレキサンダー・グレイ氏の2人。ともに、台湾海峡の情勢や経済に関して豊富な知識を持つ。

2人は、オバマ政権の台湾に対する扱いは「実にひどいものだった」とした上で、「台湾はおそらくアメリカのパートナーの中で軍事的に最も脆弱だ」と指摘。さらに、「台湾海峡の軍事バランスが北京側に傾いていると国防情報局が2010年に警告していたにも関わらず、オバマ政権は中国大陸の野心を食い止めるために必要となる、台湾への包括的な武器の供与を拒み続けた」と批判している。

他のトランプ政権のメンバーも台湾に対しては協力的とみられている。

中央通訊社の記事によると、民進党の陳水扁政権(2000~08年)で国防部副部長を務めた林中斌氏は、「トランプ政権で要職に就くのは、かつて反共産主義の立場をとっていた人々で、台湾に対しては、基本的にとても友好的だ」という主旨のことを述べている。

また、アメリカの対台湾窓口機関であるアメリカ在台協会の台北事務所元所長のダグラス・パール氏も23日、「共和党と政権移行チームには台湾を強く支持する人々がいるため、台湾が売られるような危機は心配していない」と語った。

日米が協力して台湾を守るべき

トランプ氏は選挙期間中から、日本やドイツ以上に激しく中国を攻撃していた。トランプ氏の発言を見ると、「大統領就任初日に中国を『為替操作国』に認定する」「中国のハッカーや模造品に規制強化する」「中国の輸入品に45%の関税を課す」「中国の覇権主義を思いとどまらせる。米軍の規模を拡充し、南シナ海と東シナ海で米軍の存在感を高める」と、かなり強硬だ。

安倍晋三首相も台湾の重要性を認識はしているが、台湾を国とは認めておらず、今のままでは、日本は台湾防衛に対してできることは少ない。日本は、台湾を国として認め、有事の際はアメリカとともに台湾を防衛するという「台湾関係法」の法律整備などが急がれる。

アメリカがトランプ政権に移行することを契機として、日米が力を合わせて台湾を防衛し、中国の台湾併合を許さない「強さ」を備えられることを期待したい。

(小林真由美)

【関連記事】

2016年10月8日付本欄 台湾の蔡総統が語った日本政府への期待 日台海洋対話や一歩踏み込んだ経済協力は実現するか

http://the-liberty.com/article.php?item_id=12035

2016年8月号 台湾で新政権の国防ナンバー2に直撃インタビュー 民主国家との連携を強めたい

http://the-liberty.com/article.php?item_id=11500

2016年6月号 台湾ルポ -国防女子が行く!- 日本と台湾は運命共同体だった

http://the-liberty.com/article.php?item_id=11225