6日付ウォール・ストリート・ジャーナル

香港の民主化を求める学生リーダーのジョシュア・ウォン氏が、タイの空港で拘束を受けていたことが分かった。複数のメディアが報じている。

ウォン氏は、2014年の雨傘革命を先導したリーダーの一人であり、4月に設立された新党「デモシスト」を立ち上げた一人でもある。もう一人の雨傘革命のリーダーであったネイサン・ロー氏は、9月に行われた香港の議会選挙で当選を果たしている。19歳のウォン氏は、21歳以上という被選挙権の規定により、立候補することが叶わなかった。

ウォン氏はタイのチュラロンコン大学に講演者として向かう途中だった。同大学では、1976年10月6日、タイで起こった政府の治安部隊による虐殺事件の40周年イベントが執り行われる予定で、そこでの講演者として、ウォン氏が招待されていた。

しかし、ウォン氏は、タイの空港で12時間拘束された後、香港へ送還され、講演は実現しなかった。報道陣へのウォン氏の説明によると、空港で20人ほどのタイの移民当局の役人に囲まれ、「ブラックリスト」に載っているという理由で、入国を拒否されたという。

「中国本土に入ったことがないのに拘束」

事件に関してウォン氏は次のように語った。「香港の人間として、中国本土に入っていないにも関わらず、まさか、海外で警察に拘束され、拘留所にいれられるなどとは、予想だにしていませんでした。信じられないことです」(6日付ロイター)

また、ウォール・ストリート・ジャーナル(6日付)によれば、タイの活動家は、タイの警察官の会話から、「タイ政府は北京からの書簡に従って動いているということが分かった」と発言している。一方、タイ政府は中国政府の関与について否定。中国外務省も「中国政府はタイの法に基づく入国および出国管理に敬意を示している」とだけ声明を発表した。

同紙によれば、各人権団体は、今回の件に関して中国やタイを非難している。人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国調査員ソフィー・リチャードソン氏は、「(本件は)悲しいことに、バンコクが喜んで北京の指示に従うということを示唆しています」と語った。

中国か欧米かで「揺れる」アジア諸国

タイ政府は、以前にも中国の民主主義活動家を中国本土へ送還したり、中国での弾圧から逃れたウイグル人100人を送還したりするなど、親中的な傾向が批判されていた。とうとう自治を認められている香港人さえも、同じような扱いをされるようになってしまった。

タイに加えて、フィリピンのドゥテルテ大統領は、アメリカとの軍事同盟を方向転換し、今後中国やロシアから装備調達をする旨を示唆している。アジア諸国に、中国と協力体制をとるか、それとも欧米側につくかという「揺らぎ」が見える。

公然と人権を無視し、自由を抑圧する中国は、軍備を増強すると共に世界諸国への経済的影響力を高めている。日本は、この状況を沈黙のまま見過ごしてはならない。(片)

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