1月17日付インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙の教育欄に、欧米のMBAなどの実務教育コースが文学や哲学などの「一般教養」を重視し始めているという記事が載っている。以下、その抜粋。

・世界でも上位にランクするスペインのIEビジネススクールは、米ブラウン大学とのコラボレーションで、一般教養(liberal arts)に特化したコースを3月から開講する。同スクール学部長のBach氏は「将来のリーディング・カンパニーを目指すなら、ビジネスの戦略やスキルだけでは不十分だからだ」としている。

・なぜなら、現代のように変化が速く、しかも異文化が競合する世界にあっては、一般教養科目によって養われる「心の広さや柔軟性」(the breadth and flexibility of mind)が競争優位性の源泉となるからである。

・シカゴ大学ロースクールなどで教鞭をとるNussbaum氏は「たとえば裁判官は、法律書に書いてあることで万事足れりと思いたがるが、名判決というものは、異文化や他の視点(たとえば男性から見た女性の立場)に関する想像力から生まれることが多い」と言う。彼女のお気に入りの教材はプラトンの対話編。「分析、討論、批判的思考に関するスキルを学ぶための教材として、非常に重要なものです」

・トロント大学のMartin氏は、ビジネススクールだけでなく企業の重役会にも、一般教養的な価値観を取り入れるべきだと言う。彼によれば、人文科学を軽視してSTEM(科学Science技術Technology工学Engineering医学Medicine)ばかりを重視する教育行政の結果、「ヘッジファンドのマネージャーが、経済は方程式で説明できると考えたりすることが、今のビジネス界における最大の問題点だ」

ある時代の理数系的な知識(たとえば天動説)は、絶対の真理のようでいて実は間違っていたりする。文系の教養科目を通して、「世の中には、自分の知らない考え方や自分と違う価値観がありうる」という、ソクラテスの「無知の知」に通じる柔軟性を養うことが、グローバル時代のビジネスパースンの武器になるだろう。(T)

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