米心理学者のロバート・エップスタイン氏とロナルド・ロバートソン氏がこのほど、米国科学アカデミー紀要に、興味深い論文を投稿した。

内容は、ネットの検索サイトを使って世論を操作することができるというものだ。

検索結果の優先順位を入れ替えるだけ

グーグルなどの検索サイトが、選挙情勢などを操作するために使える可能性は、以前からささやかれてきた。

今回公開された論文によると、世間が選挙候補に対して持つ好感度を数十パーセントという割合で変えることができるという。

では、具体的にどのような情報操作が可能なのだろうか。

研究では、4556人の市民を3つのグループに分け、それぞれに、特定の政治家の情報を検索してもらった。それぞれのグループに提示される検索結果は、「政治家Aに好意的なサイトが検索上位に来る」「政治家Bに好意的なサイトが検索上位に来る」「特に操作なし」に分けられた。

その結果、情報操作を受けた2つのグループでは、48.4%もの人が、検索上位に来た政治家に対して好意を持つようになった。しかも、対象者の75%は情報が操作されていることに気付かなかったという。

グーグルなどの検索順位は、「人」ではなく「機械」が決めている。厳密には、グーグルの裏にある検索ソフトが優先順位を決定しているわけだが、このソフトは人間が書いたものだ。たとえソフトを書いた人の本意ではなかったとしても、ソフトに多少手を加えるだけで、選挙情勢を左右してしまう可能性があるのだ。

情報そのものが操作されたときに真実を見極めるには

これは考えて見れば恐ろしいことだ。たとえ「正しく物事を見る」ために情報収集の努力をしても、そもそも判断材料となる情報が操作されていれば、間違った結論に達する可能性がある。

日本でも、2009年に民主党が政権を握った理由の一つに、偏向報道で世論を操作したマスコミの存在があった。だが、今回の研究によると、たとえマスコミの偏向報道に疑問を抱いてネット検索で真実を見極めようとしても、その検索自体も操作されている可能性があるということだ。

大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『日本の繁栄は、絶対に揺るがない』の中で、次のように指摘している。

ほかの人が全然分からない仕組みをつくって世界のシステムを統一し、裏から情報操作をして世界を動かそうとする"新しい独裁者"が出てきたとき、ほとんどの人は分からないまま情報操作に踊らされ、ものすごい被害を受けることになるのです

そして、情報操作されないためにも、「 もっと大きなマクロの目で、もう一段深く、その本質を見抜いていかなければならないと思います 」と指摘した。

一見公平な情報を閲覧しているように見えても、実際に公平な見方をするためには、相手の思想や信条を洞察し、相手が心の中に抱いている念いを理解する必要がある。また、大きな目で物事を俯瞰し、提示された情報を基に物事が進めば、どのような未来が訪れるのかを考えなければならない。

情報が氾濫し、それが操作される可能性すらある現代においてこそ、「正邪を分かつ目」や高い認識力で物事を見る力が必要となる。(中)

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