大阪市教育委員会がこのほど、被害者救済に大きく舵を切った、いじめ対策基本方針を策定した。いじめに関する情報を隠ぺいした教師を懲戒処分するなどの厳正な対処を明記している。各紙が報じた。
大阪市教育委が作成したのは、文科省が2013年に施行したいじめ防止対策推進法(いじめ防止法)において、全国の自治体に基本方針を策定するよう求めていたもの。
基本方針では、いじめを受けた可能性があれば被害者と見なして対応に当たるとしている。人間関係よりも被害者の救済を重視し、深刻な事例については加害者を出席停止にして外部施設で指導したり、被害者が求めた場合は加害者に転校を促すなども盛り込んだ。暴行や恐喝などの犯罪行為が疑われる場合は、内部で解決しようとせず、すべて警察に通報する。市や学校の、保護者への説明責任なども明示した。
まず被害者を守ることが大切
今回の基本方針がいじめ防止法よりも一歩踏み込んでいる点の1つは、情報を隠ぺいした教師への厳罰を定めているところだ。
この基本方針について、5000件以上のいじめ相談を受け、講演活動を行っている、一般財団法人「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」代表の井澤一明氏は、取材に対し、次のように語った。
「今回の方針で重要なのは、教師への懲戒処分を明確にしたところです。教師による隠ぺいと、話し合いで仲直りさせようとすることでなかなかいじめがやまない。まず被害者を守ることが大切です。いじめが起きた場合の次善策ではありますが、『いじめに関する教師の責任を問う』ということは、全国に広めるべきです」
いじめは「学校内で起きた犯罪」
また、早期対応として、犯罪行為が疑われる場合にすべて警察に通報することを定めている点も評価できる。
記憶に新しいところでは2月、深夜に呼び出された被害者が殺害される事件が起きた。これは犯罪だが、「いじめ事件」として報道された。本誌でも再三伝えている通り、「学校内で起きた犯罪」に他ならない深刻ないじめは多く存在する。犯罪行為を起こしても、単に「指導」を受けるだけであれば、抑止力は生まれない。加害者が社会的に制裁を受けるという前提は、学校に正義を取り戻すために必要だ。
今回の対策方針決定を機に、子供が安心して学べる学校が増えることを願いたい。(居)
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