営業する店に嫌がらせする「自粛警察」が横行 ナチスの時代前夜の匂い
2020.05.03
写真:Ned Snowman / Shutterstock.com
《本記事のポイント》
- 営業する店に「勝手に張り紙」「罵声」「通報」
- ナチス時代、「旗の揚げ方」で通報相次ぎ、ユダヤ人狩りも6割が住民の密告
- "自粛全体主義"に警戒を
全国に休業要請が出されているなか、やむをえず営業を続ける店などに嫌がらせをする、「自粛警察」と呼ばれる行為が、社会問題化している。
営業する店に「勝手に張り紙」「罵声」「通報」
東京新聞は2日付夕刊の一面で、店内で定期的にライブを開催していたダイニングバーの被害を紹介している。
同店は、ライブハウスへの休業要請を受けて、無観客ライブをネット配信していただけである。しかし看板に、「安全のために、緊急事態宣言が終わるまでにライブハウスを自粛してください。次発見すれば、警察を呼びます。近所の人」という張り紙が見つかったという。
他にも、営業しているパチンコ店で、男性が「休業指示が出ているのに営業するのはおかしいやろ!」と叫びながら、店員に体をぶつけ、スマホで撮影する(日刊スポーツ)など、各地でトラブルが相次いでいる。
法的根拠のない"懲らしめ"は、度を超せば、「私的制裁」となる。これは法律で認められておらず、単なる加害行為として罰せられることもある。
他にも、直接の嫌がらせではないが、「自粛中なのに店が営業している」「公園で子供が遊んでいる」といった110番通報も相次いでいるという。
「旗の揚げ方」で通報相次いだナチス時代
この「自粛警察」の横行や、社会の流れに従わない者を攻撃する空気は、戦前のドイツにおけるナチス時代を彷彿とさせる。
当時、ハーケンクロイツ(鍵十字)の旗を掲げることは、ドイツ国民の義務だった。そのため市民たちは近隣を監視し、「鍵十字の旗を家に掲げていない」「旗が小さい」「旗を降ろす時間が早かった」といった告発を、当局に大量にしていたという。
後世から見れば、滑稽で盲目的で、残酷な風景だ。しかし当の本人たちは、「ハーケンクロイツを掲げないことは非道徳的だ」という"正義感"に駆られていた。
ドイツのユダヤ人狩り、6割が住民の密告
「旗」の話ならささいな問題だが、こうした空気が"ユダヤ人狩り"にエスカレートしていった。
ナチス支配下では、ユダヤ人などが次々に検挙され、強制収容所に連行されていったのは有名だ。秘密警察「ゲシュタポ」が彼らを探し回ったわけだが、限られた人数で地域を取り締まるのには限界がある。その強力な警察権力を支えたのが、市民による自発的な密告だった。ドイツにおけるユダヤ人検挙の60パーセントが、住民密告によるものという研究もある。
反ユダヤ主義も、当の本人たちからすれば、"正義"であり"道徳"であったことは、要注意である。
"自粛全体主義"に警戒を
現在の日本で散見される「自粛警察」や、それに準ずるようなネットでの書き込みも、"正義感"に基づくものも、あることはあるだろう。しかし、ナチス時代と同じ匂いがし、「警察国家」につながりかねない動きは、大いに警戒する必要がある。
そもそも今回の「緊急事態宣言」自体が、大局的な比較考慮を欠いた問題の多い内容である。間違っても、「自粛警察」の動きが、政府・マスコミと一体となった"自粛全体主義"になってはならないのである。
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