福島第一原発の危機管理の甘さをWSJが指摘

2011.04.02

31日付ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は、東京電力福島第一原発が有していた災害対策文書を精査したうえで、同文書の内容が、起こりうる災害の範囲を甚だしく過小評価していたと報じている。以下、抜粋。

・同文書の内容は監督官庁の承認を得ているが、比較的小規模の災害にしか対応しておらず、日本で起こりうる最悪のケースのシナリオを想定していない。例えば同原発は今回の事故で東京消防庁、航空自衛隊、米軍の支援を受けることになったわけだが、これらの機関やその連絡先について一言も書かれていない。

・災害対応マニュアルの主要部分は、外部との主な連絡手段としてファックスを想定しており、東電の幹部職員が政府に連絡する際のファックス文書の書式をこと細かく収めている。ある文書は「経済産業大臣、県知事、近隣市町村の首長に15分以内に一斉にファックスすること」と定めており、ファックスが届いたかを電話で確認することが望ましいとしている。

・日本の監督官庁や原発運用会社は、国民を不安に陥れたくないという理由もあって、最悪のシナリオについて話し合ったり準備したりすることを避けたがる傾向がある。福島第一原発の事故管理文書にも「重大な事故が起きる可能性はきわめて低く、工学的見地からは、事実上、考えなくてよい」と書かれている。

記事はクールな筆致で書かれているだけに、「今どきファックスで連絡とは……」と絶句してしまう。また、同紙が示唆する「最悪のシナリオを直視したくない」というメンタリティーが日本人全般にあるとしたら、太平洋戦争で客観情勢を無視して敗戦への道を歩んだことが想起される。最悪の事態に備えるのは、国民の不安を煽るマイナス要因というより、国民の命を守る責任と智慧の表れと考えるべきだろう。日本人として、他人事でなく自戒の材料としたい。(司)

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