日露首脳会談に先立ち、英大手紙がプーチン独占取材 「リベラルの限界」を語る
2019.07.01
28日付フィナンシャル・タイムズ紙の一面。
《本記事のポイント》
- プーチン大統領が英紙の取材に「リベラルは時代遅れ」と発言
- EUの移民政策を批判し、トランプ政権の移民政策を評価
- LGBT保護も、伝統的価値観を逆に追い詰めるなら行き過ぎ
英フィナンシャル・タイムズ紙は27日、大阪でのG20に先立ち、ロシアでウラジーミル・プーチン大統領に独占取材した(28日付)。
同紙によるとプーチン氏は、リベラルな価値観はもはや時代遅れであり、「これまでの数十年と違って、(リベラル派は)誰に対しても何ら影響力を持たない」と語ったという。
また、100万人以上の移民・難民受け入れを決定したドイツのアンゲラ・メルケル首相に対しても、「基本的な過ち」を犯したと批判。アメリカのドナルド・トランプ大統領については、メキシコからの不法移民と薬物の流入を防いでいると評価したうえで、このように述べた。
「リベラルな概念は何もする必要がないことを前提としている。移民は、殺人や略奪、レイプをしても罪に問われない。なぜならば、移民としての権利が守られなくてはならないからだ」「いかなる犯罪も罰せられなくてはならない。リベラルな概念は時代遅れのものとなった。国民の大多数の利益と矛盾するものとなっている」
また、リベラルな政府はやみくもに多文化主義を追い求め、性的多様性などを受け入れてきたと指摘。「LGBTの人々について何も問題はないと思っている。ただ、行き過ぎていると見えることもある。今や彼らは、子供たちに5つもしくは6つの性のあり方を認めるという」「人口の中心を占める数百万人の人々の文化や伝統的な家族の価値が脇に追いやられるようなことがあってはならない」と語った。
強硬派に見えるが、実は的を射た発言
一見、プーチン氏の発言は保守強硬派に思えるかもしれない。しかし、海外諸国の現状に照らし合わせると的を射た主張だと分かる。
ドイツを初めとする欧州諸国は当初、移民の受け入れに積極的だった。しかし、公用語教育など「自国民」にするだけの制度が整わないまま受け入れ続けた結果、コミュニティーの断絶が生まれ、治安の悪化を招いた。トランプ氏がメキシコとの国境に壁を築こうとしているのも、すでに約1100万人に上る不法移民が全米にあふれ、アメリカ国民の生活を圧迫していることによる。
自国民の安全や財産と引き換えに移民を受け入れるというリベラルな価値観に、限界が来ているということだ。
LGBTについても、マジョリティーの(多数派)文化を変えてしまうような極端な動きが出ている。
今年の2月、学校において母と父の呼称を「親1号」「親2号」に置き換えて呼ぶという法案がフランスの下院で可決された。同性婚家族への差別を解消するという目的で、マクロン政権の与党議員が要求したという。父母の呼称までなくさなくてもよいのではと議論を呼び、再度検討されることになった。マイノリティー(少数派)が迫害されることがあってはならないが、マイノリティの権利を追い求めるあまり、マジョリティーの伝統的な生き方まで変えてしまうのは行き過ぎだろう。
リベラルの限界と、行き過ぎたLGBT活動。どちらも、各国の動きを踏まえた冷静な指摘だと言える。
「独裁者」としてプーチン氏を批判する向きも強いが、先入観にとらわれず発言の真意を公平に見る必要がある。
(片岡眞有子)
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