真備町浸水 自民党が「ぶっ壊し」、民主党が「仕分け」た治水予算
2018.07.15
《本記事のポイント》
- 真備町も鬼怒川も、浸水は予想され、対策も計画されていた
- 17年で半減した「治山治水」予算――自民も民主も同罪!?
- 日本は「防衛意識」も高める必要がある
「日本人は水と安全はタダだと思っている」
イザヤ・ベンダサン著『日本人とユダヤ人』にこんな有名な一説がある。しかし、その水はしばしば猛威をふるい、安全が高くつくことを日本人に思い出させる。このたびの西日本豪雨も、その一つだろう。
お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまにお見舞いを申し上げたい。
真備町も鬼怒川も、浸水は予想され、対策も計画されていた
ここに、悔やみきれない事実がある。
今回の豪雨で最大の被害を受けたのは、浸水で49人が死亡した(12日時点)岡山県倉敷市真備町。実はこの地域には、洪水時の浸水域を予想する「ハザードマップ」が作成されていた。そして、国交省がドローンで今回の浸水域を確認すると、ハザードマップの想定域とほぼ重なっていた。
2つの川が合流している上、その合流地点が湾曲して、水が流れにくい。この地形から見て、豪雨で水量が増えれば、ちょうど今回、堤防が決壊した辺りで、水が溢れることは予想されていた。実際に同地域では、1972年、76年にも大規模な浸水が起きた前例もあった。
国交省は、すでに対応策を練っていた。川の合流地点をずらすことで、浸水を防ぐ改修工事の計画だ。工事は、今秋にも始まる予定だった(10日付朝日新聞電子版)。
今回の事態は予想されており、対策も計画されていた。ただ、間に合わなかったのだ。
こうしたことは今回だけではない。2015年9月、関東地方・東北地方を豪雨が襲った。茨城県の鬼怒川の堤防が決壊し、2人が死亡した。その決壊部分に関しても、国交省は、「10年に1度規模の洪水には対応できない」として、改修工事を計画し、用地買収などにも着手していた。被害は予想されたが、同じく、間に合わなかった。
17年で半減した「治山治水」予算――自民も民主も同罪!?
「悔やみきれない」というのは、政治の判断次第では間に合っていたかもしれないからだ。
下図は、ここ17年間の「治山治水」につけられた国家予算の推移。半分に近い減り方をしている。きっかけになったのが、2001年に始まった小泉政権だ。「自民党をぶっ壊す」という言葉のもと、「利権の象徴」「財政赤字の元凶」である公共事業を大幅削減した。
追い討ちをかけたのが、民主党政権だった(グラフ青線部)。「コンクリートから人へ」という言葉のもと、公共事業費をさらに削減した。
その後の安倍政権でも、「第二の矢(財政出動)」といった言葉は踊ったものの、公共事業削減の流れから出ていない。
一連の災害を、「民主党のせい」と指摘する声もあるが、上記のような改修工事は10年以上かかる。直接的な責任を問うのは、フェアではないだろう。政治家の判断はもちろんだが、「公共事業を無駄と見ていた」「ポピュリズム的に公共事業を悪者にする」と考えた、日本人全体の思想にも問題があったと見るべきではないか。
日本は「防衛意識」も高める必要がある
安全はタダではない。むしろ、命に関わる以上、最大の資産だ。
だからこそ、公共事業によって堤防増築や橋の改修などをすれば、それは財政上も「資産」と見なされる。資金調達のために発行された国債も、バラまきや社会保障費のために発行された「赤字国債」と区別され、「建設国債」と呼ばれる。
今後も異常気象が増えることが予想される。防災に関わる公共事業のピッチを、前のレベルにまで戻す必要がある。
同じことは、国防にも言える。
中国は、軍備拡張を加速し、南シナ海に軍事拠点を築き、東シナ海でも挑発行為を繰り返している。世界の安全保障における"ハザードマップ"があったなら、日本列島は確実に危険地帯入りしている。
防衛省がミサイル迎撃体制を強化したり、防衛費を国内総生産(GDP)の2%の水準に引き上げる検討をしたりしていることに、反発は出ている。日本人が同じ轍を踏まないよう祈りたい。
(ザ・リバティWeb企画部)
【関連記事】
2018年7月13日付本欄 平成最大の西日本豪雨はなぜ起こったのか 現政権に問われる不祥事の責任
https://the-liberty.com/article/14653/
2017年11月11日付本欄 「シン・ゴジラ」と「北朝鮮核問題」の笑えない共通点
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
「ザ・リバティWeb」協賛金のご案内
YouTubeチャンネル「未来編集」最新動画