揺らぐ「脳死は人の死」 Part.2 アメリカでも揺らぐ「死」の定義
2017.09.29
2017年11月号記事
衝撃レポート
揺らぐ「脳死は人の死」
脳死宣告から3年、娘の身長は11センチ伸びた
ドクターヘリによる救命医療を描いたドラマ「コード・ブルー」でも注目を集めた
脳死者からの臓器移植。果たしてこれが正しいのか、
日米の医療の現実を元に考えた。
(編集部 河本晴恵)
contents
Part 2
アメリカでも揺らぐ「死」の定義
アメリカでは、脳死に関する議論が続いている。その一部を紹介する。
アラン・シューモン博士
米大統領生命倫理評議会発行の白書。
臓器移植の先進国であるアメリカでも、「脳死を人の死」とすることに対して、医学界からは疑問の声が上がっている。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校名誉教授で脳神経学者のアラン・シューモン博士は1998年の論文(*7)で、「脳死状態で14年以上成長し続けている少年」など175例を挙げ、「脳死」でも患者が死んでいるとは言えないとした。
米大統領生命倫理評議会が2008年に発行した脳死に関する白書は、「脳死」という用語を「全脳不全」に変えるよう提案。評議会に出席したシューモン氏は、本誌の取材にこう答えた。
「『全脳不全』と言う方が望ましいでしょうが、その呼び方は医学界ではまだ受け入れられていません。そもそも脳死であると診断されていても、脳の一部である『視床下部』だけ機能している例もあるのです」
生命倫理評議会でのシューモン氏の発言を受けて、「脳死の患者が死んでいるとは思えない証拠も出ている。倫理的には、こうした疑いが取り除かれない限り、脳死の人々を『生きている』と扱うべきである」とする論文(*8)も出された。
またシューモン氏は、「日本は、脳死の科学研究において飛躍的に重要な役割を果たすことになる」と指摘する(*9)。
アメリカでは脳死状態になると、呼吸器を外すか、臓器提供を行うかどちらかを選択しなければならない。また、スペインやフランス、オーストリアなどでは、原則として、本人が臓器提供を拒否していない限り、脳死状態になると臓器が摘出される。
「日本以外では、脳死の患者を長期的に生かしておくことは受け入れられません。しかし、脳の機能が止まってから、数日、数週間、そして数カ月で、肉体にどのような影響が生じるかについては、生理学的に関心の高い問題です」(シューモン氏)
日本における長期脳死の患者の症例は、世界の脳死の常識に一石を投じるかもしれない。
(*7)Chronic "brain death"(1998) (*8)D. Alan Shewmon and the PCBE's White Paper on Brain Death(2013)
(*9)Brain Death or Brain Dying?(2012)
宗教界からも疑問の声
本当の死の瞬間とは?
最先端医療の条件とは?
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