トランプの「ツイート砲」が日本企業を標的に 安倍外交の正念場がやってきた
2017.01.08
《本記事のポイント》
- トランプ氏がトヨタの工場計画を批判
- 安倍政権が進めるTPPに待ったをかけたもの
- 日本は外需ではなく、内需を活性化させるべき
「トヨタ自動車は米国向けのカローラ製造のための新しい工場をメキシコのバハ(カリフォルニア半島)に建てると言った。とんでもない!」「米国内に工場を建てろ。さもなくば、高い関税を払え」
アメリカ次期大統領のドナルド・トランプ氏が5日、自身のツイッターでこう投稿し、トヨタのメキシコ工場建設計画を批判した。これを受けトヨタの株価は、約3%下落し、他の自動車メーカーの株も売られた。
トランプ氏は、ツイッターを利用した同様のやり方で、米自動車メーカー「フォード」のメキシコ工場建設計画を非難し、計画断念に追い込んでいる。ついに日本企業にも、影響が及んだ形となった。こうしたやり方は、「ツイート砲」「指先介入」などと評され、世界の指導者や企業経営者などが、次の標的は誰であるのかと"戦々恐々"としている。
日本の新聞、トランプ氏を痛烈批判
これに対し、7日付の日本の新聞は押しなべて、トランプ氏に批判的な記事を掲載した。
産経新聞は、「トランプリスク 現実に」との見出しをつけ、「トヨタは米国生産を重視してきたが、世界販売で首位を争う存在感の大きさが雇用流出の『標的』になった格好だ」と説明。日本経済新聞は、「恫喝政策、危うい拡大」という煽り気味の見出しで記事を掲載した。さらに毎日新聞も、「全世界の企業の活動に予測不能なリスクをもたらす『米国第一』の暴走だ」と批判している。
安倍政権も「ツイート砲」の射程圏内!?
トランプ氏の行動は「予測不可能」という意見が根強くある。だが、同氏の言動を注意深く見ると、グローバル化によって生じた産業の空洞化を防ぎ、内需を拡大させて、国内の経済を再建させることを狙っていることが分かる。
実際に政策においても、法人税率を15%に下げるなどの大減税を掲げている。この流れの中で、トヨタのメキシコでの生産に待ったをかけたわけだ。
その点、安倍政権は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を推進し、「外需」を拡大する姿勢を見せており、トランプ氏とは真逆の考え方をとっている。しかし、アメリカが通商政策を大転換させようとする今、外需依存の政策を進めれば、今回のような「ツイート砲」の餌食になる可能性が高まるだろう。
トランプ氏が大統領就任を前に、日本を代表するトヨタを批判したことを考えると、「TPP潰し」を鮮明にする意味合いがある。実は、トランプ氏から見れば、トヨタではなく、安倍晋三首相の考え方こそ、「とんでもない!」と言いたかったのでは、と勘繰りたくなるほどだ。
日本も内需拡大政策を
TPPからの離脱を予告しているトランプ政権の発足を見据え、日本がすべきこととは何であろうか。やはり、外需に頼るのではなく、内需を活性化させる経済政策を打つことだ。法人税を下げて、企業活動を後押しするとともに、消費税や所得税なども減税して、経済を活性化させる必要がある。そうした「ジャパン・ファースト」が、今求められている考え方であろう。
ただ今回のツイートは、トヨタは米企業ではないので、「米国内に工場を建てろ」というのは言いすぎだろう。日本もトランプ革命の大きな流れに乗り、一定の国内回帰を進めながらも、国益を損なう局面では、2国間の交渉で堂々とアメリカと渡り合うべきだ。
安倍首相は11月に、トランプ氏と会談した後、「まさに信頼できる指導者だと確信した」と語っている。安倍外交の正念場が早速、訪れている。
(山本慧)
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