震災から5年 現地ルポ - 福島で怖いのは放射線ではなく糖尿病
2016.02.28
2016年4月号記事
震災から5年 現地ルポ
福島で怖いのは放射線ではなく糖尿病
3・11から5年。復興が遅れている福島では、約10万人が今も避難生活を続けている。 何が復興の妨げになっているのか。
福島第一原発から約20キロメートルの距離にある南相馬市を訪れた。
(編集部 河本晴恵)
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坪倉正治
(つぼくら・まさはる)
医師。東京大学医科学研究所特任研究員。南相馬市立総合病院などで非常勤医として勤め、放射線の知識に関して地域で講演を続けている。
内部被ばくを測定する大人用の検査機器。
乳幼児用の検査機器「ベビースキャン」。「実際には、大人が被ばくしていないのに子供が被ばくしている、という状況は考えられません」(坪倉医師)
「理屈では大丈夫と知っていても、不安が拭えない方も多い。『普通に生活して、お子さんを被ばくさせることはありませんよ』と説明しています」
南相馬市立総合病院に勤務する坪倉正治医師は東京大学の研究所に所属する。そのかたわら、2011年4月から毎週、東京から南相馬に通う。市内やその周辺の複数の病院で、食べ物から受ける内部被ばく量の検査を続けている。同病院では、これまで6万件の検査を行ってきた。
「放射線量で高い値が出るのは、『裏山のキノコ』など露地のものを採って食べた方がほとんどです。とはいえ健康に害が出るレベルではなく、自然に体外に排出されます」(坪倉医師)
同病院は、乳幼児を検査できる「ベビースキャン」も導入している。これまで約2千人の乳幼児を検査してきたが、問題があったケースは1件もない。
また、南相馬市の水道水から放射性物質は検出されておらず、流通する福島県産の農産物の放射線量も全て基準値内だ。
それでも同市では、「子供に水道水は飲ませない」「福島産のものは食べさせない」と決めている保護者も少なくないという。
取材を通して、「福島は安全」ということを示す科学的なデータがあっても、多くの人々が見えない放射線への恐怖心にとらわれている実態が分かってきた。
糖尿病が増える理由
南相馬市と相馬市で糖尿病の発症率が急増している
福島もパリも変わらない
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