今年12月から、うつ病など、職場の従業員の心理的な負担を調べる「ストレスチェック」の実施が、従業員50人以上の事業所で義務づけられる。過労などでストレスを抱える労働者の増加を受け、「メンタルヘルス(心の健康)対策の強化・充実」が急がれていることが背景にある。厚生労働省の指針などが4月に公表され、メディアでは各企業の取り組みやアンケートが紹介されるなど話題になっている。
7日に公開された実施マニュアルによると、従業員は年に一回、希望制で、「職業性ストレス簡易調査票」にある57のチェック項目に答える。その内容は、抑うつなどの心の状態、食欲や睡眠の状態、仕事の量や周囲の支えの有無など。調査結果は数値化され、一定以上の数値が出た場合は、「高ストレス者」に該当し、医師の面接指導を受けるよう勧められる。なお、医師と面接したい場合は、企業にその旨を申し出ることになっている。
「国が主導してやるべきこと」なのか?
確かに、企業が従業員のストレスに積極的に目を向け、カウンセリング体制を整えたり、職場環境を改善したりする動機づけになるという点では効果はありそうだ。だが、これは果たして「国が主導してやるべきこと」なのか。
ちなみに、ストレスチェックの費用は全額、企業持ち。16日付の読売新聞によれば、診断には従業員一人当たり500~1000円、医師の面談なども含めると数千円にふくらむ可能性もあり、企業への負担は決して小さくないという。
事業所の99%以上を占める中小企業が消費増税の煽りを受ける中、新たな「税金」を課せられたと捉える企業もあるだろう。政府はこれ以上、企業の競争力を弱めるような政策を採るべきではない。
一方、従業員にとっても、「からだを大変よく使う仕事だ」や「一生懸命働かなければならない」など、業種や本人の仕事への情熱に大きく左右される項目に答えた結果をもとに、「高ストレス者」か否かを判定されるのは、真実性に乏しい。一定の条件の下で働いても、能力や体力、意欲によって個人差はあるはずだ。「リストラや降格の口実にされてしまうのではないか」という不安もついてまわるだろう。
「仕事は人間の幸福の一つの大きな要素」
また、政府が働く人々に対して「ストレスチェックをする」と言ってしまうと、場合によっては「働くと、ストレスが生まれる」という認識がまかり通ってしまう。スイス人思想家のカール・ヒルティは自著『幸福論』の中で、「仕事は、人間の幸福の一つの大きな要素である」と説いた。ストレスなどの仕事の負の側面よりも、仕事のやりがいや働くことの楽しさ、社会の役に立つ喜びが世の中に広く実感されることが望ましい。
そもそもストレスの原因となる悩みや苦しみは、宗教的に見れば、心を磨き、人格を向上させる材料だ。人間の本質は「心」であり、多くの学びを求めて、あの世からこの世に生まれ変わってくる。そこで出会う悩みや苦しみには必ず意味があり、人生という一冊の問題集を解く中で、心の糧となっていく。悩みや苦しみが単に人生に邪魔なものではないと捉えることは、ストレスをコントロールする力にもつながるだろう。
第一に、政府は不必要な法改正によって企業に介入し、活動を委縮させるべきではない。第二に、仕事に対して積極的な意味にも注目し、各企業・各人が潜在的な力を発揮できる環境を作るべきだ。(翼)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『仕事と愛』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=754
幸福の科学出版 『ヒルティの語る幸福論』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1232
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