2012年11月号記事

反政府デモが内戦に発展しているシリアでは、デモ開始から1年半が経つ今も、戦闘が止む気配がない。アサド大統領側は、都市部への無差別砲撃や空爆を激化させており、8月の死者数は月間で最多の約5千人。デモ開始以来の死者数は2万6千人を超えた。

弾圧の苛烈さを考えれば、人道的配慮からとっくに米軍などが介入し、戦闘を止めていてもおかしくない。その意味でこの問題は、 従来の国際的な役割からアメリカが後退しつつある ことを物語っている。

オバマ米大統領は、現地で化学兵器が使用された場合に、介入もありえるとの考えを示しているが、「今すぐ虐殺を止めよう」という気概は見られない。11月に迫る大統領選でも、外交問題は争点から外れており、超大国アメリカの視野は内向きになっている。