(『この国を守り抜け』第4章「危機の十年を迎え撃て」より抜粋・編集。2010年9月26日収録)
憲法九条は、他の国が平和を愛していることが前提
今後、アメリカは日本防衛から引いていくことが予想されるので、今、引き止めに入っているわけですが、「そう長くは戦力を留めてくれないのではないか」と思われます。
かなり強い財政危機のなかで、アメリカの現在の実質的な国防費は、国家予算の四十パーセントを超えており、ここを削るのが最も楽であるため、どうしても削っていくと思われます。
そのため、「アメリカが日本防衛から退いていく流れ自体は止まらないのではないか」と考えています。
アフガニスタンでは、まもなくアメリカ軍の撤退が始まり、事実上の敗戦が決まるので、アメリカの戦闘意識はかなり落ちてくると思うのです。
したがって、やはり、「日本独自で、ある程度、防衛する」という考え方を持たなくてはいけないでしょう。これは決して、他人事ではありません。「自分の国の国民の命や財産、文化を守る」というのは大事なことなのです。
そして、どの国にも、他国を侵略する権利はありません。
民主党を支援している日教組は、日本国憲法の第九条が定める「平和主義」を、一生懸命、子供たちに教え込み、「憲法九条を堅持する」ということを、約六十年間、方針にしてきているのでしょう。
憲法九条では、確かに、「国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄」や「戦力の不保持」が定められています。
ただ、日本国憲法の前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と書いてあります。その前提の下に、憲法九条では、「戦争を放棄し、一切の戦力を持たない」と定めているのです。
ところが、北朝鮮や中国が「平和を愛する諸国民」でなかった場合には、憲法前文の前提条件が崩れます。“平和を愛さない国民”に取り囲まれていて、攻められるおそれがあるなら、そのあとの九条については条文の解釈だけでも変えるべきです。少なくとも、「集団的自衛権を行使できる」というぐらいの解釈には踏み込むべきでしょう。
「国連軍に動いてもらう」と考える人がいるかもしれません。しかし、国連の安全保障理事会の常任理事国には中国やロシアが入っており、安保理の決議に対する拒否権を持っているので、中国やロシアが反対に回る場合には、国連軍は動けません。そのため、「北朝鮮や中国から日本を守るために、国連軍が動いてくれることは、ありえない」と思わなくてはいけないのです。
したがって、少なくともアメリカがまだ日本の友人である間は、日米が一緒に活動できるようにしておく必要はあると思います。
ただ、アメリカも、自分で自分の国を守る気がないような国を、それほど支援してくれるとは思えないので、退くときには、本当に、あっさりと退いていくでしょう。そのときは危険なことになるだろうと思います。