2025年6月号記事
Movie
編集部がオススメする「今こそ観たい」映像作品。
「セブン・イヤーズ・イン・チベット」
1997年公開
神秘の地・チベットでたどった魂の変遷
- 【スタッフ】
- 監督・ジャン=ジャック・アノー 原作:ハインリヒ・ハラー 脚本:ベッキー・ジョンストン
- 【キャスト】
- 出演:ブラッド・ピット、デヴィッド・シューリス、B.D.ウォン、マコ、ダニー・デンゾンパ、ジャムヤン・ジャムツォ・ワンジュク ほか。


© 1997 Mandalay Entertainment. All Rights Reserved.
【レビュー】
ナチス・ドイツ統治下のオーストリア。スイスのアイガー北壁世界初登攀で名を馳せた登山家ハインリヒ・ハラー(ブラッド・ピット)は、ヒマラヤ山脈のナンガ・パルバット遠征隊に加わり、国家の威信を賭けた登頂に旅立つ。だが、雪崩に遭遇して断念。その上、本国へ帰還する途中で第二次世界大戦が勃発したため、遠征隊はイギリス軍によってインドの捕虜収容所へ送られてしまう。
脱走を何度も試みたハインリヒは、ついに成功。死の危険を犯しながらもヒマラヤを越え、禁断の地・チベットに潜入した。彼の目にも美しい聖都ラサ。そこで数奇な運命をたどり、ハインリヒは少年のダライ・ラマ14世と出会う。やがて彼の家庭教師となったハインリヒは、惜しみなく知識を分け与えながら親交を深めていった。だが、中国人民解放軍によるチベット侵略が突如始まる……。
原作は、登山家ハインリヒ・ハラーによる名著『チベットの七年』。映画用に脚色されてはいるが、高慢で利己的だったハインリヒが、ラサへ巡礼する人々の深い信仰心に打たれ、己の罪の浄化を願うようになっていく様子が描かれていく。自我を捨てることの大切さや転生輪廻、生きるものへの慈悲を教えられ、努力と修行を重ねて救いを見出すという御仏の教えを知る場面が印象深い。一方、「宗教は毒だ」という言葉とともに、中国軍がチベットの僧侶や僧院を無差別に蹂躙していくシーンが非常に痛ましい。
「神々の土地」を意味する都ラサや、シャンバラ伝説が伝わるヒマラヤの美しい大自然をバックに、現在にも通じる唯物論や全体主義国家の問題、宗教的な精神性の大切さ、心の救済について、深く感じさせてくれる。

© 1997 Mandalay Entertainment. All Rights Reserved.
ザ・リバティWeb シネマレビュー
「セブン・イヤーズ・イン・チベット」
(星4.5。満点は5つ)