月刊ザ・リバティ2023年6月号「つぶれない経営─コロナ時代の経営心得─」では、厳しい時代だからこそ、お客様の心に寄り添ったサービスを行うことの重要性に迫りました。
今回は、クレームとの向き合い方と経営の関係について、民間企業や学校、病院、官公庁などから引っ張りだこの苦情・クレーム対応アドバイザーである関根眞一氏のインタビューの中で、本誌に掲載しきれなかった内容を3回に分けて紹介いたします。
2回目の今回は「クレーマーを恐れないために」。
知識を持てば、毅然とした対応が取れる
関根 眞一
──苦情やクレームを言う人の中には、恫喝してくる人や無茶なクレームを言う人もいると思います。こうした場合に、どのように対応されるのですか。
関:「相手の話をよく聞く」というのが基本であるのは同じですが、"いちゃもん"を言ってきている時には、察知して、こちらも言うべきことは言う必要があります。
例えば、先方が脅しで、一方的に「20万円で、ここを収めよう」と無茶な請求をしてきても、こちら側は「私どもは再三お答えしているように、保険金額以外は出ません」と一貫した態度を取ります。恫喝してきて「お前、俺のことなめているのか」と言っても、「私は、何々様に初めてお会いしております。とても、なめるというような失礼は出来ません」と言い、向こうが「お前じゃダメだ」と言って代理を出せと言われた際に、「 私の代理の人が来ても全く同じことを言いますけど」と、そういう"勝負"になります。
そうこう押し問答をして時間が経つと、向こうの兄貴分らしき方が「おい、関根さんからは何も取れないぞ」と言われる。私は「何か取られちゃうところだったんですか?」と、分からないふりをして聞きます。「いやいや、そうじゃない」、すかさず「金ですか?」と、恐喝をけん制。「いやいや、そんなこと言ってない。まいったな、今日は戻る」というような運びになったこともありました。
お客様にお知らせしていないなら、こちらの落ち度
関: これは、相談アドバイザーの仕事をしている時のことですが、あるバッグのメーカーが、ショルダーバッグを肩からかけて歩いたら、かばんの角がスーツと擦れて、スーツが毛羽立ってしまうというクレーム相談を受けました。「俺は知らなかった」「どうしてこんな長いベルトをつけるんだ」などと苦情を受けたので、私のところに相談に来た次第です。
私はそのメーカーに、「あなたのところは、『これを肩に長い時間かけると、こんな状態が起こります』ということをタグに書いてあるか」と聞きましたが、そのような注意書きはありませんでした。毎日使っていれば、服の同じところが擦れるわけですから、タグがない以上は、メーカーは100%補償を要求されることでしょう。苦情を言っている方が正しいのです。
ただ、相手の言い分を全部メールで確認させてもらうと、それは"いちゃもん"だったのです。相手は「このスーツは15万円したんだ。その15万円もしたスーツが、もう着られない。どうしてくれる」と言っているのですが、そのスーツは買ってから10年も経っていて、実は、世間の評価基準は、ほとんどゼロなのです。
もし、「まだ2年も着てないスーツがこうなった」と言われた場合は、「タグがないんだったら弁償する必要」が生じますが、"いちゃもん"をつけてくる人の場合、古くなったスーツが少し陽に焼けてきたから、とわざと仕掛けてくる。こういう場合は、独自の判断で、慌てて対応する必要はありません。慌てた時には、よい結果には至らない場合が多いのです。