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国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は8月31日、中国の新疆ウイグル自治区で「深刻な人権侵害」が発生していると指摘する計46ページの報告書を公表しました。

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報告書は、中国側が「職業技能教育訓練センター」と主張する施設の収容経験者への聞き取り調査を基に、共産党を賛美する歌の強要、手足を椅子に縛り付けて通電した棒で殴られるなどの拷問、女性収容者への「婦人科検診」でレイプを含む性的暴行などの証言が記されており、「身柄拘束の劣悪な環境に加え、度重なる拷問や虐待の疑惑は信ぴょう性が高い」などと指摘しています。

そして、イスラム教の宗教的実践に過ぎない行為がテロや過激派であるとみなされることや、ウイグル族など少数民族の人口減少などから、「生殖に関する権利」への疑問なども記載。ウイグル人らが置かれる状況は「テロ対策や過激派対策の適用という文脈で、深刻な人権侵害が行われている」「国際犯罪、特に人道に対する罪に当たる可能性がある」と結論付けています。

OHCHRは中国側の声明も同時に公表しており、中国は報告書の「発表に断固として反対する」と表明。人権状況の評価は「反中国勢力が捏造した偽情報などに基づいており、中国に非があることを前提にしている」とし、「中国の法律や政策を歪曲し、誹謗中傷している」と主張しています。

バチェレ国連人権高等弁務官らは5月に訪中。新疆の刑務所や「職業技能教育訓練センター」とする施設などの視察を行うと報じられていましたが、視察内容は非公開でした。「中国に融和的な姿勢だ」との批判の声もありましたが、バチェレ氏はかねてから任期満了に伴う8月31日の退任までに報告書を公表するとしており、約束を果たした形になります。

バチェレ氏は公表に先立つ8月25日、報告書について、およそ40カ国が署名した、公表に反対する書簡を受け取っていたことを明らかにしました。7月にはロイター通信が、中国がジュネーブの各国代表部に書簡を送付し、公表差し止めに向けて支持の署名を要望するなど、外交工作を展開していたと報じています。

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