国連のバチェレ人権高等弁務官は5月、人権弾圧が問題視されている新疆ウイグル自治区を視察することになっている。

同氏の訪問に先立ち、先遣隊が4月末に中国南部の広州に到着した。一行は中国の厳しいコロナ規制に基づいて隔離中だが、隔離期間が終われば同自治区を訪問する予定だという。

中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官はこのほど、北京での定例記者会見で、「高官訪問の目的は交流と協力の促進だ。この問題を利用した政治的な操作には反対する」と釘を刺した。

また、バチェレ氏が昨年6月、国連人権理事会で"深刻な人権侵害の報告"を確認するために同自治区を訪問する意向を示した際も、中国の国連代表部は「中国の主権に干渉する誤った発言を止めるように」と警告している。

多くのウイグル出身のジャーナリストが拘束

新疆ウイグル自治区では、当然ながら自由な報道や取材も許されない。国境なき記者団(RSF)は27日に発表した書簡で、バチェレ氏に対し、中国での報道の自由への弾圧について取り上げるよう求めた。

RSFによると、中国は2021年の世界報道の自由度指数で、180カ国中177位とほぼ最下位に位置する。現在124人以上のジャーナリストが中国で拘束され、その半数以上が新疆ウイグル自治区出身で、生命の危険にさらされているという。

バチェレ氏への書簡で、「近年、習近平国家主席は中国でニュースや情報を統制し、市民をオンライン監視することに基づいた社会モデルを押し付けている。(中略)特に新疆ウイグル自治区では報道規制で情報が遮断され、ジャーナリズムを取り巻く状況は深刻だ」と警鐘を鳴らしている。そして報道と情報の自由への弾圧を阻止し、拘束された全てのジャーナリストを解放するためにも、あらゆる必要な措置を講じるよう、バチェレ氏に求めている。

ウイグル・ジェノサイドは全人類で対処するべき問題

これまで本誌・本欄で報じてきた通り、強制収容所への収監や強制労働、不妊治療の強要など、中国当局が新疆ウイグル自治区で数百万人ものウイグル人に対して行う人権弾圧は、民族抹殺を目指すジェノサイドそのものだと言える(関連記事参照)。

本誌2021年10月号で取材した国際的信教の自由委員会副議長のヌリー・ターケル氏によると、「ナチス・ドイツの強制収容所には、最大で75万人が収容されていたが、新疆ウイグル自治区の強制収容所の収容人数はそれをはるかに超えている」。そして「強制収容所数は1200以上あると言われている」という。

1200以上もある強制収容所で、大規模な人権弾圧を行っていても、中国政府は「高官訪問の目的は交流と協力の促進」「中国の主権に干渉するな」などと突っぱねて、都合の悪いところは全て隠そうとする。

しかし、本誌2022年5月号で取材したウイグル人女性グルロイ・アスカルさんは、「中国はいつもウイグル問題を『内政問題だ』と主張するが、一国の政府がこれほどの大犯罪を起こしている。決して内政問題ではない。人道的な問題であり、全人類の問題だ」と訴える。

彼女が指摘する通り、これは全人類で対処するべき問題だと認識する必要がある。普通に考えれば、国連高官が新疆ウイグル自治区を視察しても、人権弾圧についての証拠を集めることは難しいだろう。だが中国に対し、国際社会が強力な圧力をかけながら、世界各国の人々が中国から得られる金銭的利益よりも善悪の価値観を重視するように訴え続けなければ、この問題は解決しないことも事実だ。

そうした問題意識から、本誌ではウイグル問題について取り上げ続けている。4月30日発刊の2022年6月号「ユニクロ・無印良品はウイグルから完全撤退を」は、ノーベル平和賞候補にも選ばれているウイグル人経済学者イリハム・トフティ氏の娘・ジュハル氏へのインタビューを掲載している。また同号の特集「なぜ幸福実現党だけが日本を救えるのか」でも、この問題について取り上げている。ぜひお読みいただきたい。

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