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東京都が2021年3月に、飲食チェーン「グローバルダイニング」に対して新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき「時短営業命令」を発令しました。これを受け同社は「時短命令は違法である」として都を相手取り、損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしました。

このほど開かれた第6回期日で、前回期日で証人採用された京都大学の藤井聡教授に対する尋問が行われ、藤井教授は「時短要請は統計学的に有意ではない」と証言しました。

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期日後に開かれた会見で藤井教授が問題視したのは、「21時以降の人出抑制には感染予防効果があるという、政府が21年4月に発表した分科会の資料」です。都はこれに基づき、時短要請には合理的な根拠があるという立場を示していました。

藤井教授はその資料を分析した結果、「統計学的に全く解釈不能な資料」と批判しました。同資料には、21時以降の人出抑制は感染対策上「有益」と記されていますが、「有益」という専門用語はそもそも存在しないと指摘。統計学的には「有意」という言葉が適切であるとし、データを再度分析したところ、「人流抑制は有意ではない(意味がない)」という、政府が示す逆の結果になったと法廷で証言し、これに対する都の反論はなかったと説明しました。

藤井教授は「有意でないことを隠蔽する形で、人出を減らせば感染者も減らせて有益だとした資料は欺瞞的。都は、その資料について学部生レベルの統計学的検証もせず、漫然と時短命令を出して国民の自由を奪ったことは極めて悪質だ」と痛烈に批判しました。

さらに、「時短要請を行っても、世の中からその時間が丸ごと消えることはなく、飲食店に行かない代わりに、人間は他の行動を取るだけで、感染リスクはゼロにはならない」とする一方で、「時短要請によって、早めに飲食店に入店する人が増え、店内の密度は1.5倍に高まったというデータもある」など、時短要請には論理的にも誤りがあると、藤井教授は主張しています。

人流抑制には感染予防効果があるという前提で、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発されてきました。しかし、そこには科学的な根拠が全くなく、計り知れない経済的・社会的ダメージを与えたという指摘は、波紋を呼びそうです。

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