《ニュース》

前トランプ政権下で、中国による技術盗用への防止策が進められてきました。これに対して現在、米研究者側から中止を求める声が強まっています。

このほど、米カリフォルニア州の名門・スタンフォード大学の教職員177人が連名で、司法省に書簡を送付。国内の各大学における中国のスパイ探しを止めるよう要請しました。

《詳細》

8日付とされ13日に公表された書簡は、トランプ政権下の2018年末に発足した「チャイナ・イニシアチブ」を問題視。同取り組みは当初、中国による米技術の盗用防止を目的としていたものの、今では「その使命から大きく逸脱」し、「アメリカの研究と技術の競争力を損ない、偏見を助長し、ひいては人種差別的な取り締まりを巡る懸念を引き起こしている」としています。

批判を受け、司法省の報道官ウィン・ホーンバックル氏は「(米政府は)アメリカの国家安全保障を損ない、経済に悪影響を及ぼす中国政府の違法な取り組みに対抗することに専念している」と説明。その一方で、アジア系アメリカ人に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)の脅威を認識しているとし、「差別に関する懸念を真剣に受け止めている」と語りました。

スタンフォード大学教職員による書簡を受け、中国外交部の趙立堅報道官は14日、定例記者会見で次のように主張しています。

「『チャイナ・イニシアチブ』は、実質的にアメリカの反中勢力が国家安全のコンセプトを悪用し、中国を抑圧するために使う道具だ」「中米関係に深刻な衝撃を与えただけでなく、米国内の人種差別現象をエスカレートさせ、アメリカのアジア系の人々に深刻な傷害を与えている」

中国の国営通信社・新華社によると、今回の書簡に先立ち8月にも、20以上の在米アジア系団体が同様の書簡を送っているとのことです。

内容としては、チャイナ・イニシアチブを一時停止し、同イニシアチブがアジア系の人々を不公平に扱っていないか独立調査を行うよう求めるもの。さらには、バイデン政権が情報機関に新型コロナウィルスの起源解明調査を指示したことに対しても強い懸念を表明し、次のように論じています。

「新型コロナウィルスが自然界に由来することは大多数の科学者の共通認識だ。いわゆる、『新型コロナウィルスが中国の研究所に由来する』という仮説はアメリカで一連の陰謀論づくりに用いられ、政治家たちはこれらの陰謀論をアジア系米国人のイメージを損なう武器とし、アジア系アメリカ人を新型コロナウィルスのスケープゴートにした」

中国による深刻な技術盗用を防止するため、トランプ政権が多方面から対策を立てましたが、その取り組みに制約がかからんとしています。

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