軍事では人工知能の導入、宇宙兵器の登場など、猛スピードで技術が進化している。同じく命にかかわる防災分野は、それだけの進化をしているだろうか。

天然痘は、歴史上幾多の文明を脅かす、抗いがたい自然の猛威だった。しかし現在では、ワクチンやその接種体制が飛躍的に進化し、ほとんど根絶された。

防災においても、「昔は災害で当たり前のように人が亡くなっていたが……」と言われる時代を、目指せるのではないだろうか。

本記事では、前回に引き続き、「死者ゼロ」を目指すための防災構想を紹介する(2019年2月号記事の一部を再掲。情報は掲載時のもの)。

Idea: ロボットがあなたを見つける

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「72時間の壁」という言葉がある。阪神・淡路大震災では、救出者における生存率が災害発生から72時間を境に急減した。

1時間でも早く要救助者を見つけることができれば、助かった命は数多くあっただろう。

そうした災害現場で調査活動を行うのが、ロボット部隊だ。

災害対応ロボットを開発している移動ロボット研究所・代表取締役の小栁栄次氏はこう語る。

「初動調査用ロボットは、災害現場の映像だけでなく、可燃性ガスや有害なガスの検出、酸素濃度や温度湿度のデータを毎秒ごとに送ることができます。

救助隊はその確認後、適した装備で救助に向かえますし、速やかに管理区域も設定できます」

災害対応ロボットは大きさが命。小さすぎると階段を上れず、大きすぎると現場に入れず、人を踏みつぶす恐れもある。被災地の入り口までは、救助隊員がロボットを持って運ぶため、重さも30キロ程度が限度だ。

平時から使うことが大事

これまで小栁氏は車輪型、クローラ型、ドローンを搭載したハイブリット型などさまざまなロボットを開発してきた。

「災害対応ロボットは、別の用途でも使えます。例えばトンネル掘削工事でダイナマイトによる爆破後に落盤がないかを調べられる。こうしたロボットは平時から使っていないと、いざという時に役に立ちません。

私も昨年(2018年)1年間、藤沢市消防局に、開発したロボットを預けて、訓練に使ってもらいました。現在、災害対応ロボットのリースサービスが成り立たないかを検討しています」(小栁氏)

今のところ災害対応ロボットはあまり活用されていない。だがその有効性を考えれば、消防署などに災害対応ロボットが"常駐"し、災害時に出動する未来はきっと訪れるだろう。

Idea: 電源が空から"降って"くる

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北海道胆振東部地震では道内全域がブラックアウト。在宅人工呼吸器のバッテリーが切れ、病院の自家発電装置も3日ほどしかもたないなど、多くの命が危険にさらされた。

前出の濱口氏は、「全国どこでも電源をパッと投下できるシステムをつくればいい」と指摘する。例えば、各地の拠点に自家発電装置を数多く保管しておき、停電が起きたら、その地域にドローンで運ぶ。

発電に利用できる自動車はすでに開発されているが、道路が寸断されていれば動けない。ドローンならどこへでも行ける。

「災害からエネルギーを得る」という逆転の発想も可能だ。

現在、風力発電機は、台風が来ている時に稼働させると火花が散る恐れがあるため、停止させなければならない。しかし、ベンチャー企業「チャレナジー」が実用化を目指す台風発電機なら、台風の中でも発電できる。

Idea: 「階上都市」でお年寄りも安心

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海岸地域に数多く存在しているのが、昔ながらの木造住宅だ。

しかし多くの木造住宅は高さも構造も津波に弱い。波が床上1メートルを超えると半壊する。2メートルを超えると全壊し、流されてしまう。

東日本大震災でも津波で木造住宅がバラバラに壊され、多くの人が犠牲になった。

それならばそもそも街づくりの段階で、津波が来ても人命が助かるようにすればいい。

NPO法人建築・街づくり支援センター理事長の阿部寧氏は、「階上都市」というものを構想している。

「階上都市とは、高いビルの中に生活に必要なお店や病院、学校、役所、住居などが入っている、コンパクトシティのことです」

横ではなく、縦に逃げる

この都市は「横に逃げる」ではなく、「縦に逃げる」という発想に基づいている。

住居スペースは津波が到達する想定の高さより上層階につくる。下層階にはショッピングセンターなどの商業施設や漁業関係の生産・飲食施設が並ぶ。

下層階にいた時に津波が来た場合は上層階に逃げればよく、小発電所や終末処理場、人工農園なども備えているので、物資不足に陥っても生活できる。

この構想は過疎化問題の解決策にもつながる。

住居や生活に必要な施設を一カ所に集めることで、移動手段のないお年寄りでも不便なく、安全に生活することができる。一石二鳥の構想だ。

「公的資金だけでなく、民間資本や経営ノウハウを導入することでコストも抑えられます。事業費は建物の骨格(スケルトン)にあたる部分を公的機関が負担し、内装(インフィル)にあたる部分を民間事業で行えばよいと思います」(阿部氏)

Idea: 「防災」から「弱災」へ

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どんなに防御を固めていても、想定を超えた災害は必ずやって来る。

そこで、「そもそも自然の猛威を人為的に弱める」という攻めの発想をしてみたい。

潜水艦で台風を弱める

例えば、「潜水艦で台風の勢力を弱める」という研究がある。

三重県の伊勢工業は、「海面温度が高いことで台風の勢力が維持される」ことに着目した。

そこで「台風の進行海域に潜水艦群を出動させ、ポンプで水深30メートルの低温水を海面に汲み上げて海面温度を下げ、台風の威力を弱める」という仕組みを考案。すでに日本とインドで特許も取得しているという。

人工衛星で台風を弱める

また米ソーラーエン社などは、人工衛星から台風に電磁ビームを照射し、台風の進路を変えたり、勢力を弱体化させたりする構想を持っている。これもすでに特許取得済みだ。

バクテリアで津波を弱める

高知県の海洋研究開発機構高知コア研究所は、南海トラフ地震の被害を軽減するため、震源となる大陸と海洋の両プレート(岩盤)の断層にバクテリアを増殖させる研究を行っている。

バクテリアが生成するセメント状の物質がプレートを固着し、海底が一度に動く大きさを減らし、津波を小さくできるという。

波同士が打ち消し合う!?

富山大学は、「津波を止めるのではなく、消散させる防波堤」を考案している。

細長いひし形の防波堤を一定間隔で並べ、津波にその間を通過させる。すると波同士が打ち消し合い、津波の高さを約10分の1に減らせる。従来の防波堤と二段構えで使えば、より効果が期待できるという。

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