グーグルなど大手IT企業が、日本における独占的な地位を盾に、不公正な取引をしている恐れがある──。公正取引委員会は17日、「デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書」を発表し、強い懸念を示した。

同報告書は、事業者や消費者へのアンケート・ヒアリング調査や、各国当局との意見交換などを行ったうえで、委員会としての考え方を示したもの。これを基に、独禁法違反案件の処罰などが行われていくため、わが国の「大手IT政策」にとって一つの転換点となる。

米司法省がグーグルやフェイスブックを提訴するなど、欧米で進む「GAFA包囲網」づくりが、わが国でも動き始めようとしている。

独占禁止法に反する行為・競争政策上の問題行為を列挙

報告書では、グーグルやフェイスブック、ヤフーなどの「デジタル・プラットフォーム事業者」が、いくつかのデジタル広告の分野で独占・寡占的な地位にあることを再確認している。

その上で、こうした地位を盾に「取引条件の一方的変更」や「競合他社との取引制限」などを行えば、独占禁止法違反の疑いがあると指摘。他にも、さまざまな公正性・透明性に欠ける行為を例に挙げ、競争政策上望ましくないと警鐘を鳴らしている。

企業が圧倒的なシェアにあぐらをかくと、社会や消費者の利益を損ねることがある。そのシェアを盾に、ライバルが大きくならないよう不当に邪魔をしたり、客が離れないとタカをくくって、理不尽な取り引きをしたりできるのだ。

大手IT企業は現に、それに近い行為をしている。

経済「独占」懸念の背景に、政治「独裁」の影

また、特に大手IT企業は情報を握る存在であるため、経済的な「独占」が、政治的な「独裁」につながるという懸念も、一連の動きの背景にはある。

偏った情報ばかりを流して世論誘導したり、人々から吸い取った情報を監視に利用したりしているという指摘がある。これも、ライバル不在で客が離れにくいからこそできる暴挙だ。

本誌・本欄では、大手IT企業が独占を盾に「検閲」を行っていることについて問題提起してきた。

今回発表された公取委の報告書では、そうした観点からも注目すべき「問題行為」の指摘がある。

■ユーチューブの保守動画削除は独禁法違反!

報告書では、広告仲介業者や媒体社に対する一方的な「契約解除又はサービス・広告配信の打切り」が、「取引先に不利益を与え得る行為」であり、「独占禁止法上問題(優越的地位の濫用)となるおそれがある」としている。

昨今問題視されている「ユーチューブにおける保守的な動画削除や広告制限」が、これに当たる。

ユーチューブ動画を広告付きで配信している事業者や個人が、納得のいかない理由で広告・動画をストップされれば、「グーグルから、取引相手として多大な不利益を与えられた」ことになる。

実際、多くの場合、その削除・制限理由が「意味不明」だ。

本誌1月号記事「言論統制をするGoogleは独禁法違反!」では、グーグルが運営する動画投稿サイト「ユーチューブ」が、「コミュニティガイドライン」を恣意的に適用し、コンテンツの広告制限・削除を行っている例を示した。

オピニオンチャンネル「ザ・ファクト」では、いわゆる「南京大虐殺が本当にあったのか」を検証する番組を、現地、中国・南京市にまで行って取材。綿密な史料調査や識者インタビューなどに基づき、長い時間をかけて作成した。

しかしその動画群が突如、「暴力の美化」という理由で削除される。「史実の検証」がなぜ「暴力の美化」につながるのか、具体的にどの描写が"問題視"されたのか、説明は一切ない。

その他にも、「広告表示の制限・停止」はさらに幅広く行われている。ザ・リバティWebの映像番組「未来編集」のコンテンツについては、それぞれ下記のような理由で広告制限がかかっている。

《動画例(1)》

台湾南端に行くと、目の前に「日本の生命線」が通っていた 「日本を知りたくば、台湾へ行け」

処置:広告制限

理由:有害または危険な行為

「食用でないものの飲食など、健康面でのリスクを伴う事故、いたずら、スタントに注目している、またはこのような種類のコンテンツを含む急上昇動画を話題にしている」

《動画例(2)》

新型コロナウィルスは中国の武漢研究所から漏れた!? 4つの理由【独裁委員会03】

処置:広告制限

理由:有害または危険な行為

「食用でないものの飲食など、健康面でのリスクを伴う事故、いたずら、スタントに注目している、またはこのような種類のコンテンツを含む急上昇動画を話題にしている」

《動画例(3)》

なぜ台湾で毎朝、君が代が流れるのか?~「日本を知りたくば、台湾へ行け~武士道探訪編」

処置:広告制限

理由:差別的なコンテンツ

「人種、年齢、その他の自然特性に基づいた、保護対象グループに対するヘイトや差別」

《動画例(4)》

泣きながら取材した香港デモ~日本人へのSOS~

処置:広告制限

理由:説明なし

どのシーンのどの言及について「有害または危険な行為」「差別的」とみなしたのか、どう想像力を働かせても分からない。ぜひとも担当者の見解を直接聞いてみたいところだが、その手段はない。「他に有力な動画サイトはないのだから、文句を言うな」と言わんばかりだ。

公取委の報告書では「取引の公正性・透明性を高め」「相手方が意見を述べる機会を提供する」といったことが望ましいと指摘されている。

ユーチューブでは、機械が行った削除や広告制限に対して、「異議申し立て」をする仕組みになっている。それに対して、「人間による審査」が行われ、そこで出た決定に対して異議申し立てをすることはできない。しかしその「人間」が、自国人ではない可能性なども指摘されている。

詳しくは関連記事「保守動画を"せん滅"するYouTube」を参照されたい。

こうした不透明な状況を放置するなら、独占禁止法違反と指摘されることになる。

■保守に不利な検索アルゴリズムも問題行為!

さらに公取委の報告書では、グーグルなどの検索アルゴリズムについても以下のような指摘があった。

媒体社が自社ウェブサイトにデジタル広告を掲載し、広告収益を得る場合、自社ウェブサイトへの流入の一定程度を検索サイトに依存している現状においては、自社ウェブサイトが自然(オーガニック)検索結果の上位に表示されることが重要となる

この点、デジタル・プラットフォーム事業者が検索アルゴリズムを変更することにより、媒体社がアルゴリズムへの最適化を図るために負担を課されたり、コストをかけて取材を行い信頼性を高めた記事を掲載する媒体社のウェブサイトが、検索順位上、相対的に下位に表示され、PV数や広告収入が減少するといったことがあったとの声がある

要するに、「メディアの経営を、グーグルにおける検索順位が握っているが、そのアルゴリズムが恣意的に変わる」という問題である。

これについても、本誌記事「言論統制をするGoogleは独禁法違反!」では、「特定の政治的主張をしているサイトや記事の検索順位が、不当に低くされている」実態を紹介している。

グーグル検索において、中国にコロナまん延の責任を問うコンテンツが、不当にランク下げされており、本ザ・リバティWebに至っては「中国」「コロナ」というキーワードの検索結果から、記事そのものが(ランク下げではなく)消されているのだ。

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報告書には媒体社からの声として、「外資のデジタル・プラットフォーム事業者内にも日本国内向けの窓口はあるものの、アルゴリズムの変更について尋ねても本社の決定であるとして突き返され、メディアからの個別の要望は海外の本社との関係で通らないのが実情だ」というものが紹介されていたが、実情はまさにその通り。

そしてこの「不透明」なアルゴリズムの奥には、完全に世論操作とも言える仕組みが潜んでいることも、前出記事では紹介している。

こうした状況が放置されれば、競争政策上の問題行為として、さらに当局のメスが入ることになる。

独占にあぐらをかいた「不透明」体質を改めよ

上記どちらの例も、媒体側に多大な損害を与えているのみならず、民主主義にとって大きな危険となる。少なくとも、どのような基準と仕組みで、コンテンツを消し、ランク下げをしているのか、正々堂々と情報公開し、ユーザーや社会の評価を仰ぐべきだろう。

それをしないのも、独占的地位にあぐらをかいているからといえる。

大手IT企業のシェアは、そのサービスの誠実さに比して、健全な市場競争においてはあり得ない膨らみ方をしている。経済のためにも民主主義のためにも、当局はメスを入れ続けていく必要がある。

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