5.「象形寓意の書」の錬金術
「象形寓意の書」は、その緒言において錬金術との出会いの背景を詳しく語り、その本章において8つの寓意図を用いて錬金術の内容を説明しています(※4)。それらの寓意図による錬金術の表現は、神秘思想の一部であるカバラ主義の影響だとされています。ニコラ・フラメルは、自身が入手した「アブラハムの書」の解読を「象形寓意の書」のなかで詳細に記したと述べており、かなり具体的な手順が明らかにされています。
そのエッセンスは錬金術の定石である、
- (1)今日「触媒」といわれる機能を持つ「賢者の石」の作り方と、
- (2)それを用いた化学反応を行うことで、卑金属を貴金属に変えるといった「原子核変換」を今日知られている高エネルギーではなく低エネルギーで行う方法
に要約できます(※5)。