《本記事のポイント》
- 《狭い家》土地が狭いのは仕方がないが、部屋が狭いのは"法律のせい"!?
- 《満員電車》"ロンドンバス型"の電車で輸送量2倍
- 《渋滞》車の多くは"東京を通るだけ"──高速整備が鍵
東京都知事選が6月18日に告示される。大きな争点の一つは、喫緊の課題である新型コロナウィルス対策だろう。しかし、東京という都市の長期的なビジョンも、考える必要がある。
小池百合子都知事が、記者会見で「密です」と連呼し話題になったが、東京が昔から抱えている大きな問題は、都市そのものが「密」になっていることだ。
家賃が高くて狭い家、通勤が嫌になる満員電車、イライラさせられる交通渋滞──。こうした"都市の3密"を解消する発想を紹介したい(本記事は過去、掲載した記事を再編集したもの)。
《狭い家》土地が狭いのは仕方がないが、部屋が狭いのは"法律のせい"!?
東京の住居が高く、狭い最大の理由は、単純に部屋数が少ないことだ。どんなものも数が少なければ価格が高くなり、多くなれば価格は下がる。
そしてその最大のネックが、建物の高さだ。ニューヨークや香港には高層マンションが林立しているのに、東京には一戸建てや低層住宅が建ち並ぶ。景観が昭和時代から変わっていない地域も多く、空中の部分をまったく生かせていない。
背景は容積率の規制だ。容積率とは、土地の広さに対して建築できる建物の床面積の割合を指す。簡単に言えば、建物の高さが厳しく制限されている。
関東で不動産会社を経営する男性は「東京では高層マンションの需要がすごくあるので、容積率の規制が緩和されれば、高層マンションが続々とできます。東京は土地の広さが限られていますから、上に伸ばすしかありません。容積率は高ければ高いほどいいです」と語る。
建物が高くなるのは、土地が数倍広くなるのと同じだ。
「エリアによって容積率は決まっていますが、東京のどのエリアも倍になればいいですね。50棟分のマンションしか建たなかった場所で、容積率を倍にしたら、100棟建てられます。100棟を80棟に抑えて、1軒当たりの面積を広くすることもできます」(不動産会社の経営者)
気になるのは価格。前出の経営者は「容積率が2倍になれば15%安くなります。5000万円ぐらいのファミリータイプであれば、工夫すれば3700万円~3800万円に下げられるでしょう」と指摘する。
土地が狭いのは仕方がないが、部屋が狭いのは"法律のせい"と言える。
《満員電車》"ロンドンバス型"の電車で輸送量2倍
イギリスの心理学者によると、満員電車のストレスは、臨戦態勢に入った戦闘機のパイロットよりも高く、ジェットコースターが落下する直前の2倍以上という。
そもそも法律には、「乗車券ヲ有スル者ハ列車中座席ノ存在スル場合ニ限リ乗車スルコトヲ得」(鉄道営業法)とあり、乗客は、飛行機と同様に座る権利がある。満員電車は違法ではないか。
国土交通省に問い合わせると、「鉄道会社が無理やり旅客を乗せているわけではないので、違法ではない」(鉄道サービス政策室)との認識で、おとがめなし。いくら罰則がないとはいえ、他人の肩とぶつからない権利ぐらいはあるはずだ。
人間を人間扱いしない満員電車を変えるには、新しい路線、または車両を増やす必要がある。費用はかかるだろうが、社会的責任として解決すべきだ。
まず提案したいのが、車両のもう一段の本数の見直しだ。車間間隔の正確な把握とブレーキ改善などによれば、電車の本数の増加も期待できると見る専門家もいる。
また、朝夕のラッシュ時と昼間で料金を変える「ピークロード運賃」の導入も、混雑率の軽減につながる。
あるいは、発想を変え、車両やホームを2階建てにし、輸送量を倍増させる(下図)。"ロンドンバス型"型電車のイメージだ。そうすれば、電車の混雑は半減し、他人とぶつかることはなくなる。女性の敵である痴漢も激減するはずだ。鉄道会社にとっても、既存の設備を改修すれば、広大な土地を買って、新たに路線を敷かなくても済む。
電車を2階建てにすれば、混雑は減り、子連れや年配者も利用しやすくなる。写真はイメージ。
《渋滞》車の多くは"東京を通るだけ"──高速整備が鍵
仕事やレジャーで車を使う人にとって、もっとも苦痛なのが「渋滞」だろう。
取引先に遅刻しそうな時、子供が兄弟げんかを始めた時、トイレに行きたい時……。心は千々に乱れ、「何でこんなに動かないんだ!」とイライラしたことがある人も多いはず。
国土交通省関東地方整備局によると、都心の平均旅行速度は、時速16キロにすぎず、全国平均の半分以下。苦労してローンで買った車も、自転車並みのスピードしか出せないなら、宝の持ち腐れだ。
決して、ドライバーが我慢すればいいという問題ではない。都心の乗車時間の約60%は、渋滞の待ち時間に費やされ、その年間の経済損失は、東京だけで約5兆円に上る。国家の防衛費に匹敵する多額のお金が渋滞で吹き飛んでいる。都民1人当たりでは、約37万円の損失だ。
さらに渋滞は救急車の到着も大幅に遅らせている。2008年、6分5秒だった平均到着時間は、15年に7分45秒に増え、到着がどんどん遅れている。
都内で年間約76万件も出動している救急車の到着が遅れれば、当然、生存率はそれだけダウンする。渋滞が原因で、助かるはずの大切な家族の命が失われたら、遺族はその憤りをどこにぶつければいいのか。
渋滞を減らすには、都心に流入する車の量を減らすため、高速道路の整備が最優先課題だ。
現在、都心を走る車の約60%が、他県に向かう経由地として走行している。これを分散化させれば、混雑をやわらげることができる。
まず、首都圏の高速道路である「3環状9放射ネットワーク」の早期全線開通を目指すべきだ。そうすれば、都心経由の車を減らし、渋滞を最大で60%減らせる。実際、2015年に開通した中央環状線により、首都高の一部区間での混雑率は約50%減少した。
高速道路の整備は、観光客や企業進出の増加、配送コストを下げるなどの経済効果を生み、周辺自治体の税収も押し上げる。
高速道路のほかにも、幹線道路などの完成率は、計画の6割程度であり、まだまだ「伸びしろ」がある。一般道の整備にも投資すれば、約5兆円の経済損失をさらに減らせるはずだ。
お金をあまりかけない手段としては、2階建てバスやダブル連結トラックの導入で、輸送量を倍増させて渋滞を減らす手もある。そのためには、安全性を配慮したうえで規制緩和を進めるべきだろう。
例えば、一般的な都営バスの定員は70人だが、2階建てバスなら、より多くの人を乗せられる。韓国の2階建てバスの場合、都営バスの3倍の座席数を有し、渋滞緩和に一役買っている。
「家の狭さ」も「満員電車」も「交通渋滞」も、「東京の便利さの代償」とあきらめている人が多いかもしれない。しかし、ちょっとしたボトルネックの解消やアイデアで、より住みよい東京を実現できる。
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