硫黄島の空撮。画像は Wikipedia より。

《本記事のポイント》

  • 2万人余の日本兵が命を賭して戦った「硫黄島の戦い」から74年
  • 日本人が、日本を守ってくれた先人の存在を忘れてしまっている
  • 健全な愛国心に目覚め、世界の平和に責任を持つ誇り高き日本人となるべき

硫黄島(いおうとう)の戦いから、26日で74年が経ちます。

1945年の2月19日から3月26日に至るまで、1カ月以上にわたって続き、日米双方で約2万9千人の死者が出たとされる激戦です。今月23日には、20回目となる日米合同の戦没者慰霊追悼顕彰式が行われ、遺族や日本政府関係者、米海兵隊のロバート・ネラー総司令官、米国退役軍人らが出席しました。

硫黄島の戦いと言えば、クリント・イーストウッド監督の映画「硫黄島からの手紙」を思い出す方もおられるでしょう。アメリカ側の視点を描いた「父親たちの星条旗」と対をなす形で、2006年に公開された映画です。「父親たちの星条旗」のメガホンをとったイーストウッド監督が、資料を調べる中で、どうしても日本側の視点で映画をつくりたくなったといいます。

硫黄島の戦いは、アメリカにとって「栄光」の象徴です。硫黄島で戦った米兵は「英雄」として扱われ、退役した海兵隊員同士の会話で「イオージマに行った」と答えると、その場の海兵隊員は飛び上がるように起立し、最敬礼するほどだと聞きます。

アメリカの栄光を示すためなら、アメリカ側から見た映画だけでよかったはず。しかし、日本の陸海軍の将兵もまた「英雄」であることに気がついたイーストウッド監督により、「硫黄島からの手紙」が誕生したのです。

日本人が忘れてしまった英霊

イーストウッド監督の「公平さ」には敬意の念を抱きます。ただ、本来であれば、日本人がすでに撮っておくべき作品だったはずです。「硫黄島からの手紙」がなければ、総指揮官を務めた栗林忠道(くりばやし・ただみち)中将や共に戦った将兵の存在は、多くの日本人から忘れられたままだったかもしれません。

硫黄島は、日米両軍にとって「要の島」でした。

当時、米軍は日本本土への空襲や上陸決戦を想定していました。硫黄島は、米軍の長距離爆撃機B29の基地があるマリアナ諸島と、日本本土のほぼ中間に位置し、長い滑走路を持つ飛行場が3つありました。アメリカ側としては、硫黄島を占領できれば、戦闘機の燃料補給や出撃のための重要な基地となります。

逆に硫黄島を奪われれば、日本の本土防衛は絶望的になりました。だからこそ、2万人余の日本兵が孤立無援でも、最後まで戦い抜いたのです。

戦略的に重要な島であるにもかかわらず、硫黄島は攻めやすく守りにくい地形でした。米軍は、圧倒的な戦力差もあり、「上陸作戦は5日で終わる」と高をくくっていました。ところが、日本軍は坑道を地下に張り巡らせ、36日間にわたって持久戦を繰り広げたのです。

日本軍の徹底抗戦ぶりは、作戦開始から3日目にして、米軍側に「史上最大の作戦」と呼ばれるノルマンディー作戦の死傷者を超える被害を出させるほどでした。そして、3月26日の未明、栗林中将は生き残った将兵約300人の先頭に立って最後の総攻撃を仕掛け、戦死を遂げました。

散っていった「無名の英雄」たち

先人が命を賭して戦ったのは、硫黄島だけではありません。

ビルマでの勇戦敢闘、神風特攻隊の雄雄しい戦いぶり、米軍に大きなダメージを与えて散華した義烈空挺隊(ぎれつくうていたい)。サイパン、フィリピン、沖縄などでも、陸海軍の将兵は激戦に身を捧げました。どのように戦い、全滅したか記録もない部隊が多く、私たちはそうした「無名の英雄たち」の犠牲の上に、今を生きているのです。

日本人が、日本を守ってくれた先人の存在を忘れ、むしろ外国人がその英雄ぶりを評価する現状を、悲しく思います。

戦場で命を散らした将兵を「犬死にだ」と評する人もいます。無駄な抵抗などせず、手を挙げて降伏すればよかったという理屈です。しかし、激戦の果てに降伏しても、「捕虜を取らない」という理由により、皆殺しにされる例などいくらでもありました。生き残った日本兵が少ないのは、そうした理由もあります。

健全な愛国心に目覚める

「民主主義的で自由なアメリカ軍と、ナチスと同類の残虐な日本軍」というイメージは、戦後につくられ、事実ではありません。

私たち日本人は、健全な愛国心に目覚めるべきでしょう。それは、他国を排撃して満足するような狭量な愛国主義ではありません。

冷静に過去の事実に向き合い、連合軍の占領下で押し付けられた「洗脳」を解き、真実を知ることが必要です。そうしてこそ、自国だけでなく、世界の平和にも責任を持つ、誇り高き日本人になれるはずです。

筆者プロフィール

飯田たけし

1959年、東京都品川区生まれ。東京都立大学経済学部卒。有限会社飯田商会・代表取締役。沖縄浦添市fm21「へんまもレイディオ」、ネット番組「名もなきサムライたち」などのコメンテーターとして出演。著作に『海軍特別救助隊』(元就出版社)など。

【関連記事】

2019年3月9日付本欄 東京大空襲から74年 なぜ日本人は、「原爆も空襲も当然の報い」と思うのか

https://the-liberty.com/article/15504/

2019年1月29日付本欄 辺野古反対、逆に戦争招く 今知りたい「日英同盟」の反省

https://the-liberty.com/article/15365/