写真:幸福の科学・台北支部精舎で取材に応じる中国人留学生の李家宝さん。

中国から台湾に留学している21歳の男子学生が11日、ツイッター上で習近平政権の独裁体制を痛烈に批判する動画を公開し、波紋を呼んでいる。

渦中の人となったのは、中国・山東省から台湾・台南市の嘉南薬理大学に短期留学している大学2年生の李家宝さん。

動画は「私は反対する」と題し、習近平・中国国家主席が昨年の憲法改正で国家主席の任期を撤廃したことについて、「事実上の皇帝誕生」と批判している。中国の言論弾圧の現状についても、「イギリスの作家ジョージ・オーウェルが描いた荒唐無稽な世界そのものだ」と指摘している。

さらに、中国本土で迫害された何百万人もの法輪功学習者、( 2015年7月に人権派の弁護士らが一斉に拘束された) 「709事件」の弁護士たち、そして天安門事件の犠牲者など、人権侵害に遭っている人々を例に挙げ、「みな自由を渇望している」と述べた。

そして、「中国人には自由も尊厳もない」として、中国にも台湾のように言論の自由や民主主義を満喫できる日が訪れることを願った。

この動画は瞬く間に拡散された。すると13日、突然、下宿先に電話があった。中国政府傘下の中台留学生交換手続きをしている政府系機関から「7月の卒業を待たずに、すぐ帰国せよ」との命令を受けたのだ。さらに、山東省の実家の両親からも、「すぐに帰ってこい」などと伝えられた。李さんは、そのまま帰国すれば中国政府から政治的迫害を受ける可能性があるとして、台湾当局に「政治保護」を申請している。

李さんが身を危険にさらしてまで、中国批判をした真意はどこにあるのか。台北市で李さんに独占インタビューを行った。

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動画公開時、心は平静だった

──動画を公開する時、中国政府に対する恐怖心はありませんでしたか。

私の学生ビザは7月に切れてしまうので、中国に帰国したら逮捕されるのではないかという不安はありました。しかし、自分の本心を語った動画を公開した後、私の心はとても平静で、まったく動揺していませんでした。

それは、共産党の残虐な体制を批判しなければならないという私の「良心」が根本にあったからだと思います。中国の実情を一人でも多くの人に伝えたかった。(中国の人々が)真実を言えないのは可哀想です。私がしたことは人間としての義務であり、権利です。こうした使命感のもと、決意して、自分の意見を公開しました。

両親と連絡が取れなくなった

自分のことよりも、中国にいる両親の方が心配です。動画を公開してから両親とはまったく連絡が取れなくなりました。いつも連絡していた微信(WeChat)も通じなくなりました。

両親は、私が小さい頃から「国に対して、共産党に対して忠誠心を持ってほしい」という愛国的な教育をしてきました。私の今回の発言で両親が逮捕されることはないと願っていますが、おそらく中国政府からの嫌がらせは受けていると思います。

中国にいる友人を通して両親に連絡することができるかもしれませんが、私が連絡したら友人たちが被害を受ける口実になる恐れがあるので、連絡はできません。中国は「連座制」の社会なので、一人が党に反することをしたら、周りの人も罰せられるのです。本当にひどい制度です。

台湾の「自由の空気」に魅了された

──あなたはなぜ中国から台湾に留学したのですか。

実は昨年、大学1年生の時にも台湾に短期留学で来ました。その時に感じた台湾の自由な空気はとても魅力的でした。だから今年も再申請して台湾に来たのです。

台湾に来て「中国とは完全に違う」と感じました。中国で習近平を批判したら逮捕されるか、酷い目にあうのは間違いないので、誰も批判できません。しかし台湾では、ネット上で何を調べても、どんな情報を見ても自由です。習近平政権を自由に批判することもできます。こうした台湾の自由な空気がとても好きになりました。

留学仲間も去っていった

──動画の公開後、中国政府から圧力はありましたか。

中国政府から直接、私に連絡があったわけではなく、両親と留学先の大学の方に、「すぐ帰国するように」という連絡があったようです。

留学先の台湾の大学にとって、私は「迷惑な存在」のようです。私は決して間違ったことを言ったつもりはなく、事実を言っただけですが、厄介者として扱われてとても悲しいです。

一緒に留学してきた中国人の友達も、「自分とは関係ない」という感じで私との関係を切り離そうとしています。私の友達の多くは、共産党が支配している中国に対して不満を抱いていますが、それを指摘することはありません。それを言ったら逮捕される恐れがあるからです。

また、直接的に関係があるかどうかは分かりませんが、私が動画を公開した翌週の18日、北京で「学校思想政治理論科目 教師座談会」という会合が開かれ、その場で習近平が演説したというニュースもありました。

中国は『1984年』の世界

──中国の問題点について、改めて強調したい点は何ですか。

皆さんにぜひ知ってもらいたいことは、今の中国が超監視社会になっている現状です。イギリスの作家ジョージ・オーウェルが小説『1984年』で描いた社会は、現代の中国で現実のものとなっています。

例えば上海の道を歩くと、道のいたるところに監視カメラがついていて、常に監視されていることに気付きます。こうした状況は各地方都市にも広がっていくと思うので、今後ますます中国国民の自由はなくなっていくでしょう。

反日教育を受けてきたが、日本は憧れの国

──台湾、そして日本について思うことや、あなたの願いについて教えてください。

私自身については、中国に戻ったら即逮捕される可能性が高いので、これからも台湾に滞在できるよう、台湾政府が学生ビザの延長を認めてくれるよう願っています。

また、日本は素晴らしい国だと思います。日本の環境はとても清潔で美しく整っていますし、日本人はみんなとても親切で善良です。私自身は反日教育を受けて育ってきましたが、その影響はまったく受けていません。日本は私の大好きな国、憧れの国です。

中国の未来については、台湾や日本のように、言論の自由をはじめとする、あらゆる自由が認められている国に変わっていくことを心から願っています。

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今年は1989年に起きた「6・4天安門事件」から30周年となる。李さんの動画が公開された同じ11日、湖北省天門市で学生がデモを行ったことを報じたが(関連記事参照)、学生たちが中国民主化の発火点となっていくのだろうか。

(国際政治局 小林真由美)

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2019年2月号 取材相手の牧師が逮捕 敗れざる信仰者たち - 中国宗教弾圧ルポ

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