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《本記事のポイント》

  • 米外交専門家が安倍首相の中国接近に懸念を示した
  • 経済優先の外交が中国の独り勝ちを招くと警鐘
  • 外交と経済政策の建て直しが急務

中国にすり寄る安倍晋三首相に対し、アメリカから疑問の声があがっている。

米外交専門誌「ナショナル・インタレスト」に、「日本の中国接近はなぜ失敗なのか」と題した記事がこのほど掲載された。同誌は、ワシントンD.C.に拠点を置くシンクタンク「センター・フォー・ザ・ナショナル・インタレスト(CFTNI)」が発刊する保守系雑誌で、リアリスティックな論調で知られている。

執筆したのは、2003年から09年まで国務省で特使を務め、現在はCFTNIの上級研究員を務めるクリスチャン・ウィットン氏。トランプ政権でも上級顧問を務めた外交専門家だ。

ウィットン氏は、「なぜ日本政府は、アメリカが中国の貿易問題や南シナ海での威嚇行為をついに抑え始めた時に、中国に近づくのか」という副題で、このように主張した。

「安倍晋三首相は、(中国に歩みることで)日本、同盟国のアメリカ、そして安倍首相が友人と呼んでいるドナルド・トランプ大統領を害することになる」

「日中の協定がどのようなものであれ、それはアメリカとの取引の妨害にしかならない。アメリカは、自国の同盟国が中国と取引をすることの危険性に気づいている。新しく結ばれたアメリカ・メキシコ・カナダの合意のイノベーションの一つは、中国のような市場経済ではない国との合意を禁じているということだ」

「中国独り勝ち」のシナリオに突き進む安倍首相

ウィットン氏は、中国に接近する日本に懸念を示す一方で、「安全保障において、今なおアメリカは、この上ない好感情を日本に抱いている」とし、このように記事を結んだ。

「もし、北朝鮮や経済問題、そして特に中国問題において、日米が協力するという前提が真実ではなくなれば、そしてもし日本が、ドイツやフランスのような共同防衛にほとんど貢献せず、不公平な貿易慣習を維持するために努力するような国と同じ立場を取るようになれば、日本もアメリカも困窮していき、中国の独り勝ちとなる」

日本が、目先の経済的利益を優先させて中国と手を結べば、アメリカが築こうとしている「対中包囲網」を瓦解させ、中国の覇権拡大を助長することになるということだ。安倍首相による米中両国にどちらもいい顔をする"八方美人外交"は、自国のみならず、世界の平和をも脅かしかねない。戦後70年以上続けてきた経済優先の外交方針の転換が求められている。

そもそも、安倍首相が中国にすり寄る理由は、増税路線によって内需を冷え込ませているためだ。その一方でトランプ氏は、減税と規制緩和によって企業を国内に回帰させ、3%以上の経済成長を続けている。そのため、中国に厳しく対応することができる。

中国経済に頼らない外交を実現するためには、日本政府も「トランプ式」で経済成長を目指すべきだ。外交と経済政策の建て直しが急務だと言えよう。

(片岡眞有子)

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