《本記事のポイント》

  • 天安門事件は、中国共産党による一般市民への虐殺事件
  • 香港の未来は中国の未来と密接に関係するため、中国内部から変革させる
  • 民主化した中国の未来を心に描き、正しいと思うことを行動に移す

ハン・タン・チョウ

プロフィール

(Hang Tung CHOW)1985年生まれ。ケンブリッジ大学、マンチェスター・メトロポリタン大学、香港大学を卒業。法廷弁護士。

中国共産党による民主化弾圧事件である「天安門事件」から、6月4日で29年目を迎える。

香港ではその日を前に、民主化を求める団体の呼びかけにより、1100人規模(警察発表は約600人)のデモがこのほど行われ、中国共産党の独裁体制に抵抗する動きが起きている。

編集部は、中国の自由・民主主義の実現を後押しすべく、これまで数多くの民主活動家を取り上げてきた。今回、その一つである民主化団体「香港市民愛国民主運動支援連合会」の副主席であるハン・タン・チョウ氏のインタビューを紹介する(2016年7月号記事)。

中国内部を変革させる

――天安門事件について、どう感じていますか。

チョウ氏(以下、チ): 天安門事件は、中国共産党政府が軍事力を使って一般市民を弾圧した、虐殺事件であったと思っています。一般市民には、対抗する手段がなかったのですから。

――活動を続ける中で、中国からの圧力を受けましたか。

チ: 中国と取引のある香港企業は、私たちの活動に加わる人々と関係を持ちたくないと考えています。自分たちの仕事に影響が及ぶからです。

つまり、中国政府は、誰かを捕まえて刑務所に入れるのでなく、ビジネス界に影響力を持つことで、見えない圧力をかけているのです。

ただ、1997年の香港返還後、中国政府が期待したようには、香港の人々が中国に親和性を感じない状況を見て、焦っていると思います。そのため、書店関係者の拉致事件(*)のような、力に訴える手法を取り始めているのでしょう。

――香港は、将来どうなると考えますか。

チ: 香港の未来は、中国の未来と密接に関係しています。カギとなるのは、香港の人たちが、中国大陸の民主化運動を支え、中国を内部から変革させることです。香港だけに注目していても、香港を変化させることはできないと考えています。

(*)中国共産党に批判的な本を出版・販売していた香港の銅鑼湾書店の関係者が、2015年10月以降相次いで失踪した事件。

恐怖に支配されない

――香港の自由を守るために、他国をどう巻き込んでいきますか。

チ: 香港は、中国と世界をつなぐ中継地点としての役割を持っています。中国の民主化を目指す活動家を支援し、彼らの声を世界に伝え、国際社会から中国政府に圧力をかけたいのです。

気をつけなければならないのは、香港が孤立することです。中国大陸にいる人々とつながりつつ、世界ともつながっていかなければ、共産党独裁政権の弾圧に耐えて、香港が生き延びることはできません。

――これからどう活動していきますか。

チ: 人間は誰にでも恐怖心があります。しかし、恐怖心は、自分が正しいと思う気持ちや行動に歯止めをかけてしまいます。だから、恐怖にばかり思いを向けるのではなく、民主化した中国で本土と香港の人々がオープンに語り合っている未来を心に描き、正しいと思うことを行動に移していきたいです。

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2018年6月号 平和ムードの裏の人権弾圧 神を信じると「罪」になる国 Part1

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