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《本記事のポイント》

  • 尖閣諸島の近海における中国海警局の公船の航行が常態化している。
  • 中国共産党には、尖閣や台湾を占領し、アジア太平洋地域に積極的に進出する狙いがある。
  • 尖閣は日本固有の領土であり、日本は米軍に頼らず、自国で尖閣防衛を強化する必要がある。

北朝鮮情勢に注目が集まる中、日本に迫るもう一つの脅威に気づいているだろうか。

沖縄県の尖閣諸島の領海外側にある接続水域で、5日連続で中国海警局の公船が確認された。海上保安庁の巡視船が21日に2隻の中国の船舶が航行しているのを確認。18日、19日にもそれぞれ4隻が船隊を組んで尖閣海域を航行しているのが確認された。那覇の第11管区海上保安本部によると、1隻は機関砲のようなものを搭載していたという。日本側は警告を発し、監視を続けている。

アジア太平洋への積極進出を狙う中国

同様の事態は1年前にも起きていた。2016年8月には、300隻もの中国漁船が尖閣近海に現れた。その漁船を守るかのように、最大15隻もの中国公船が随行。それまでにない数の中国船に、日本政府も態度を硬化し、強い抗議を繰り返した。

こうした中国の度重なる挑発を受け、元・陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏は、2016年11月の「現代ビジネス」の記事の中で、中国が尖閣諸島を占領するシナリオを次のように述べている。

  • (1)中国は、300隻もの漁船を尖閣諸島周辺に動員。漁船には軍事訓練を受けた海上民兵が乗船している。1隻に20~30人が乗船しているとすれば、300隻だと約6000人になる。

  • (2)中国海警局の公船が漁船の活動を助けるために随行。海上保安庁の監視船と中国海警局の公船がにらみ合う。

  • (3)その隙に、漁船に乗船していた海上民兵が尖閣諸島に上陸し占領する。中国海軍の艦艇も、領海外から事態を見守り、必要ならば援助する。

渡部氏によると、このシナリオは、日本の法的不備をついた作戦であり、自衛隊は手出しができない。漁船の乗組員が上陸しても、民間人という前提のため、米軍も対応することはできない。つまり日本は、こうした事態に米軍に頼らず対処しなければいけないのだ。

中国政府が今年の5月に発表した「国防白書」には、「従来の陸軍重視、海軍軽視の伝統的な思考を突破」とある。習近平国家主席は「海軍は近海防衛型から遠洋護衛を含む複合型に転換する」と述べ、アジア太平洋地域に積極的に進出したい考えを隠そうともしていない。

中国は中国共産党創立100周年にあたる2021年までに台湾を併合するという国家戦略を描いており、それを前提にして尖閣諸島を占領したいと考えているとみられる。

尖閣の領有権を主張する中国

こうした危機的状況にもかかわらず、日本のメディアはこの問題を大きく報じていない(8月23日時点)。一方、中国メディアはどのように報じているのか。

7月25日付の人民日報(海外網)には、「中国の釣魚島(尖閣諸島)領海内を巡航した。日本の海上保安本部による道理のない警告と監視を受けた」と報じられている。また、中国外交部の華春瑩報道官が過去に「釣魚島とこれに付属する島嶼は古くから中国の領土だ。中国公船の関連海域の巡航は正当であり、合法だ。中国の領土主権と海洋権益を守る決意は揺らぐことはなく、中国は引き続き、巡航活動を展開する」と述べたことも伝えられた。

現実的に迫る尖閣侵略に対して防衛を

そもそも尖閣諸島は日本固有の領土であり、日本が実効支配している。しかし、中国は、尖閣周辺の石油資源埋蔵の可能性が言われ始めた1970年代に、突然「尖閣諸島は中国固有の領土だ」と主張し始めた。それ以来、中国海警局の公船が頻繁に尖閣周辺の日本のEEZや領海を侵犯する事態が続いている。

アメリカのトランプ政権が北朝鮮問題の解決を中国に迫る今、日本の尖閣防衛は手薄になる恐れがある。中国が尖閣周辺への領海侵入を止めないのは、日本が憲法9条に縛られている現状を見透かしているからではないか。

北朝鮮情勢に注目が集まる中、尖閣諸島沖に、「現実的に忍び寄る」中国公船への警戒を怠るべきではない。日本は一刻も早く、自力で自国の領土・領海を守る体制を整える必要がある。

(小林真由美)

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