「モディ、パキスタンにテロの責任を問う」
17日付米ニューヨークタイムズ紙がこのような見出しで印パ関係の悪化を報じている。
インドのモディ首相は、16日にインドのゴアで開かれた、BRICS(有力新興国5カ国。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのことをいう)の会議において、隣国パキスタンのことを「テロの母船」と呼び、危険性を呼び掛けた。また、中国とパキスタンの密接な関係に対しても苦言を呈している。
印パの対立関係が悪化したきっかけは、9月の国境付近カシミール地方で、インドの軍事基地が武力勢力に襲撃され、19人のインド兵士が死亡した事件とされている。インド政府はパキスタン政府の介入によるものと主張するが、パキスタン政府はこれを否定。両国間の緊張は強まっている。
モディ首相の言及からも分かるように、中パ両国は蜜月関係を築いている。
中パ関係については、中国によるイスラム過激派への二枚舌外交も指摘されている。中国は、対外的には、イスラム過激組織によるテロに対して強い批判の姿勢を見せている。
しかし、3月下旬、国連において、インドがイスラム過激組織「ジャイシュ・エ・ムハンマド」のリーダー、マスード・アズハール氏を国際的なテロリスト名簿に指定するよう要請した際、中国は拒否した。パキスタンに基地を持つ同組織を、国連が既にテロ組織として指定しているにも関わらずだ。アメリカ、イギリス、フランスを初めとする各国はインドの要請を支持していたという。
中国は、どうあってもパキスタンとの関係を崩したくないようだ。
中国がパキスタンとの関係を強める理由を同紙は以下のように分析している。
「中国は、地域の大国としてアメリカに対抗するため、また、アジアを経由する新たな貿易・輸送航路を拓くために、パキスタンとの連携を強めている」
インドは中パの連携解消を狙っているが、中国がパキスタンを簡単に手放すことはなさそうだ。
中・印・パの三国関係
そもそもパキスタンは宗教的な違いによってインドから独立した。ヒンドゥー教とイスラム教の対立が、印パ対立の根本にはある。
しかし、本件は単に「印パ」の問題として語ることはできない。モディ首相がこんなにも国際社会、とりわけ中国に向けて「パキスタン」の危険性を訴えているのは、中国とパキスタンの連携強化が、ダイレクトに自国の安全保障に関わるからだ。
インドは中パ両国と国境を接し、両国との国境紛争を幾度となく経験している。つまり、インドは、中国とパキスタンが結びつき、中パ対インドの構図となってしまうことを恐れているのだ。もともとの印パ対立に加え、「中国」という勢力が存在感を増すことで、インドの安全保障への危機感は増している。
無責任な「一国平和主義」
日本としては、インド対中パの構図が強まり紛争に繋がる前に、アジアのリーダーとして、印パ両国の間を取り持ち解決に導きたいところだ。「日本一国のみ平和であれば良い」という無責任な発想から抜け出し、「大国として、世界の平和に寄与するためには何ができるのか」を考えるべきだろう。(片)
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