インドのモディ首相とパキスタンのシャリフ首相は10日、上海協力機構(SCO)首脳会議のため訪問したロシアで会談。両首脳は、両国の軍関係者同士で協議を開催するなど、5項目で合意した。今回の会談実現には、SCOを主導する中露の働きかけがあったという。
インドとパキスタンは、1947年にイギリスから分離独立して以来、カシミール地方の領有権をめぐって対立してきた。さらに2008年に、インドのムンバイで同時多発テロが起こり、関係は極度に悪化していた。今回の合意からは、カシミール紛争を解決させたいという両首脳の思惑がうかがえる。
さらに印パ両国は、10日に開かれた中国・ロシアと中央アジア4カ国からなるSCO首脳会議で、オブザーバーだったSCOへの正式加盟が認められた。これにより、印パは中露との経済・軍事面での関係を強化していくことになる。
これまで中国は、パキスタンに対して軍事支援や「真珠の首飾り戦略」に基づく港湾開発を行うなどしてきた。一方、インドとは長年にわたる国境をめぐる争いで緊張関係が続いてきた。そのため中国は、インドとパキスタンの間に緊張状態をつくり、インドの戦力を中国に向かわせないようにしてきた経緯がある。
その中国が、今回インドとパキスタンの仲を取り持ち、SCOに加盟させて経済的な協力関係を強めた背景には、中国経済の悪化があると見られる。
6月中旬に高値をつけていた中国の株式市場は、その後、急落。中国政府は株価の下落を食い止めようと対策を打ち出すものの、今のところ劇的に改善する様子は見られない。中国の新車販売台数は、6月時点で3カ月連続のマイナスとなったが、中国経済の失速はずいぶん前から指摘されてきた。
こうした状況を迎えることを織り込んでいた中国政府は、関係の悪かったインドを取り込んで国境紛争を先送りし、印パを取りまとめることで「大国」ぶりをアピール。国内経済が苦しい中で、国際社会に不安を持たれないよう様々な外交戦略を繰り出しているのではないか。
ただその一方で、中国は、南シナ海や東シナ海などで軍備拡張を着々と進めている。こうした、一見矛盾する動きを平気でとれるのが中国なのだが、共産党政権による一党独裁支配の維持や、周辺国や後進国から資源や領土を奪い取る「新植民地主義」「大中華帝国」創設の野望が基本路線であることは、今も昔も変わらない。
中国経済のバブルはすでに崩壊しているという指摘もあるが、それが顕在化した時に、中国政府が国内に溜まった不満を海外に向けようと周辺国との間に軍事的な緊張関係をつくり出すことも十分に考えられる。日本は、そうした危機に備えるためにも、早期に安保法制案を成立させ、国民の生命・財産・安全を守る体制を築かなければならない。(泉)
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