ギリシャのデフォルト危機が世界の注目を集める中、地球の反対側で、より大きな経済問題が静かに進行している。中国市場の低迷だ。

日本のGDPの75%分が損失

上海株式市場は、6月12日のピーク以来30%以上も下落している。米CNNによると、この一カ月ほどで約3.2兆ドル(約380兆円)もの資本が消えたという。この損失額は日本の国内総生産(GDP)の75%にも上る。

中国政府は事の重大さを認識しているのか、「中国人民銀行による金融緩和」「政府機関による株の買い上げ」など、あらゆる手を使って株価を支えようとしている。また英テレグラフ紙によると、940社もの中国株(全体の約3割)が、さらなる損失を回避するために、市場取引を停止しているという。

しかし、これらの手段を講じても、株式市場の混乱は収まる気配を見せず、中国証券監督管理委員会も、市場にパニックが広がっていることを認めている。

中国経済の根本問題は共産党そのもの

中国政府は、株式市場を支えることに躍起になっているが、中国経済の根本的な問題は、中国政府そのものだ。

中国政府は、国民に政治的・経済的な自由を与えずに、国内経済のイノベーションを妨げている。また覇権拡大を目指して周辺国を脅かすことで、貿易相手との関係も悪化させている。その横暴さゆえ、日本やアメリカに距離を置かれているのだ。

株式市場の混乱は、中国の実態経済が低迷していることが表面化しているに過ぎない。

経済没落は「侵略性」を強める

このまま中国経済が没落した場合、国内の不満を外に向けるために、中国政府は周辺国への侵略行為をさらに激化させる可能性がある。

あるいは、国内の不満を制御することに失敗した政府が打倒されることもあり得る。その場合、後に来るものが、民主的な国家とは限らない。より強権的な軍事国家や、分裂した軍区ごとに核兵器などが散乱することも考えられる。

今回の市場混乱は、日本にとっても他人事ではない。中国経済が大きな分岐点を迎えているとすれば、中国政府の動向も大きく動かす要因の一つとなり、今後も要注意だ。

日本は、TPP参加はもちろんのこと、アジア地域でNATOのような同盟関係の構築など様々な選択肢を考えるべきだ。(中)

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