中国が7月1日に「国家安全法」を採択、即日施行したことを主要各紙が報じている。

英ザ・エコノミスト誌によると、中国の中央国家安全委員会が書いた国家安全法は、軍、経済・金融、インターネット、思想、宗教など、社会のあらゆる方面から派生する脅威に言及しているという。

しかし問題は、「誰に対する脅威を懸念しているのか」ということだ。国家安全法の冒頭には、「人民の民主的独裁主義と、中国版社会主義を守る」と書いてあり、この法律が中国共産党を守ることを主要目的としていることが分かる。

これを裏付けるかのように、国家安全法の中に見られる表現は非常に曖昧だ。「非健康的な文化」から社会を守る、「国民の権益」を守るとし、さらに、「脅威と思われるもの」について報告することを市民に義務付けている。これらは、どのようにでも取れる表現のものが多い。

要するに、中国共産党を守るために、「何が脅威であり」、「何が社会に有害か」の解釈をいくらでも変えることができるのだ。そのため、この法律は中国社会の全てを共産党の直接支配下に置く「新全体主義」であるという批判もある。

香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙がロンドン大学の中国法律専門家のエヴァ・ピルス氏にインタビューをしたところ、同氏は、「今回の国家安全法は習政権が法による支配を否定し、新毛沢東主義・新全体主義を肯定している証拠だ」と語った。

中国共産党は中国国民を信頼していない。いままで経済成長を約束したり、他国を悪者扱いして国民を守るふりをすることで、人々の批判が共産党に向くのを抑えてきた。しかし、国内経済が失速し、東シナ海・南シナ海における侵略行為で国際的に批判を浴びている今、残された手段は、さらなる圧政で国民を押さえつけることしかない。

習近平中国国家主席が提唱する「中国の夢」は、周辺国だけでなく、中国国民にとっても悪夢となりそうである。

中国に明るい未来をもたらすためには、共産党の一党独裁を終わらせ、中国国民の幸福に責任を持つ政府を打ち立てる必要がある。(中)

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