尖閣諸島。左から魚釣島、北小島、南小島(画像は Wikipedia より)。

尖閣諸島周辺の海域に中国公船20隻以上と400隻以上の中国漁船が8月上旬に押し寄せたが、この漁船に、訓練を受けた多数の海上民兵が乗りこんでいたことが、17日付産経新聞で報じられた。

記事によれば、海上民兵は、他の漁民を束ねるとともに、周辺海域の地理的状況や日本側の巡回態勢に関する情報収集などの任務も担っているという。このような海上民兵が、少なくとも、100人以上乗り込んでいた。海上民兵は、軍事訓練に加え、日本への憎しみを増幅させるため、映画などを用いた思想教育も受けていると、同紙は報じている。

中国の海上民兵の危険性

中国の海上民兵の危険性は、様々に論じられている。

米海軍大学校のアンドリュー・エリクソン氏は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルで、以下のような見解を発表している。

「船員や業行連合が軍事組織に採用され、軍事訓練や政治教育を受け、中国の海洋権益を守るために動員される」「必要があれば機雷や対空ミサイルを使い、「海上人民戦争」と呼ばれるゲリラ攻撃を外国船に仕掛けるよう訓練されている。現在、海上民兵は実質的に、中国政府が管理する第一線の部隊として機能している」(2015年4月1日付 The Wall Street Journal)

また、慶應義塾大学東アジア研究所現代中国研究センターの八塚正晃氏は、防衛研究所のNIDSコメンタリーに、海上民兵組織について投稿している。

八塚氏は、中国の「民兵工作条例」の規定を元に、中国の民兵を「人民解放軍の補助機関として、政府と軍の双方から指揮命令を受ける公式の武装組織」であるとした。また、中国は、海上民兵を民間と軍用のグレーゾーンとして恣意的に活用でき、平時と有事の隙間を縫うような活動を通じて、他国の対策判断を混乱させ、対応を遅らせることが可能であると述べている。

尖閣を取られてもアメリカは来ない

このように、無視できない脅威として指摘されている中国の海上民兵。その海上民兵が大挙して尖閣周辺で活動したことは、事態がかなり急迫していると言えよう。

頼みの綱のアメリカも、無人島である尖閣諸島に漁船で中国人が上陸した場合に軍隊を派遣するかといえば、可能性は低い。それが民兵だとわかっていても、中国との戦いはギリギリまで避けたいだろう。

日々情勢の厳しくなる尖閣周辺。アメリカ軍の助けは得られないという前提で、尖閣を守る準備を、早急に整えなければならない。(片)

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