全世界でブームとなった、スマホ向けゲーム『Pokemon GO』。

これについて何か記事化できないかと、編集部の同僚と話をしていたら、筆者の名前が、主人公の「サトシ」と同名であることに気づく。

そういえば、子供の頃に「今日、ピカチュウはどうしたの?」って、友達からいじられたっけ。あまりいい思い出はないが、これも何かの縁。『Pokemon GO』の発想を使って、何かできないかと考えてみた。

とはいえ、骨太のオピニオンを打ち出す本誌が、ポケモンをただ集めに行くのも、ストレート過ぎて面白くない。「自由」という名前を掲げる本誌だからこそできること……。

思いついた! 私たちの生活を苦しめる目に見えない"モンスター"である「規制」と重ね合わせてみよう。

ポケモンの3倍ある法律

よく見回すと、街は規制であふれている。ポケモンは全部で700種類以上存在するが、日本の法律は、1954もあり、増加傾向にある(7月1日時点)。つまり、ポケモンの3倍近くもある。「街を歩けば、法律にぶつかる」と言っても過言ではない。

私たちを苦しめる規制を探しに行こう。ポケモンソングである「たとえ 火の中 水の中 草の中……」と心の中で歌いながら、「カントー地方」の五反田タウンへ繰り出した。

「健康保険法」が出現した

気温35度の強い日差しのもと、携帯を片手に歩いていると、ある総合病院にたどり着いた。そこで発見したモンスターは、「健康保険法」だ。

ポケモン図鑑ならぬ「六法全書」をひもとくと、同法には、ヤブ医者であろうが、すご腕の医者であろうが、治療費は同じという料金体系(公定価格)を定めている。

この社会主義的な「公定価格」により、病院が患者に薬を処方すると、国から診療報酬が支払われる仕組みになっている。そのため、たとえ効果が薄くても、薬を出せば出すほど、病院の収入になる。もちろん、その財源は税金だ。治療効果をまったく無視した健康保険法は、社会保障費の増大を招く元凶になっている。

医療費の増大は、財政を圧迫する「国家のガン」になっているのに、こちらにはメスが入れられないとは何とも皮肉だ。いますぐ、ポケモンアイテムの「毒消し」で何とかしてほしい……。

「美容師」と「理容師」の違いとは……。

病院を後にしばらく歩くと、美容院の前に来た。次に現れたのは、「美容院法」だった。

美容院法とは、1957年に制定されたもので、美容師の仕事は「パーマネントウエーブ・結髪・化粧等の方法により、容姿を美しくすること」と定めている。

一方で、47年に立法された「理容師法」では、理容師の仕事を「頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えること」としている。

こうした法律により、美容院では、顔を剃ることができず、理容室では、パーマをかけることができない。美容師は髪を「美しく」することが仕事であり、理容師は髪を「整える」ことがメインであるからだ。

果たして、この理不尽とも思える違いに納得できる人はどれほどいるのか。これをポケモンに例えれば、なぜ空中に浮くポケモン(例えば、スピアー)に、地面技が通用するのか、理解できないほどだ。

また、最近では、美容院とカフェが併設している店舗が増えているが、カフェに入店するには、一旦外に出なければならないところがある。その理由も規制だ。美容院法には、面積がどれぐらいないといけないなどの規定が細かく盛り込まれており、客のニーズにあった多様なサービスを提供する店舗がつくりにくい。

そのためカフェが併設されても、一旦外に出なくてはならないような不便なつくりになることがある。

時短のために、色々なサービスを同一の場所で済ませたいと思うのは、当然のことだろう。だが、理不尽とも思える法律が、私たちの行動を制約する。

タクシー初乗り410円を初体験

その後、新橋からタクシーに乗ると、なんと初乗運賃が410円だった。いつもは730円だったので、安いなぁと思い、運転手にその理由を聞いた。すると今月5日より、実験的に初乗料金の値下げが行われているという。

「駅付け(駅で営業待ちをすること)だと、信号待ちですぐにメーターが上がっちゃうんですけど、『ちょっとそこまで』っていうのが便利みたいですね。特に、オリンピック前で外国人の方が増えるんですけど、初乗り730円って海外に比べてかなり高いんで、びっくりされちゃうんですよ。荷物が多いですから、雨の日なんかもちょっと使いたいですもんね。だからタクシー協会が、国土交通省に『実験させてくれ』ってお願いしてるんです。公共交通機関だってことで、値段も許認可なんですよね」

運賃を規制する理由の一つは、「運転手の労働条件の悪化を防ぐため」である。だが、多くの国では、日本よりも初乗運賃が安いものの、日本と比べて、労働条件が悪いわけではない。むしろ、価格決定権を自由化させて利用者が増えれば、運転手の賃金も上昇するのではないか。

ちなみにポケモンの世界では、アイテムを何百個単位で売ったとしても、値崩れを起こさないが、それはゲームの話だから置いておこう。現実社会は、需要と供給をベースにした資本主義なのだから。

街を歩けば、必ず出くわす規制の多くは、複雑・多様化する社会に対応できず、いわば"ジャマモン"になっている。実態に合わない法律については、「規制NO」の声を上げないといけない。間違っても、とある中東諸国のように、『Pokemon GO』を規制しないでほしい。

(山本慧)

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