アメリカのオバマ大統領が27日に、原爆の被害を受けた広島を訪れる。
今回の訪問を受け、中国地方知事会がこのほど、「核兵器廃絶と世界恒久平和を求める特別声明」を発表。元軍縮代表部特命全権大使の美根慶樹氏も、「広島訪問の主要な意義は、『原爆による犠牲者の追悼』と『核兵器(核)の削減・廃棄(核軍縮)の推進』にある」(17日付東洋経済オンライン)と主張している。
核廃絶という名の「軍縮論」がにわかに高まっている。もちろん、軍縮が平和をもたらすのであれば、全面的に歓迎すべきだ。しかし、平和の反対となる結末をもたらすのなら、どうか。
皮肉なことに、軍縮は、国家を破滅させる可能性をはらんでいる。その典型例が、第二次世界大戦だ。
「戦争をなくす試みが階級闘争生んだ」
第一次世界大戦で多くの死者を出した欧米諸国は、その反省として、国際協調に力を注いだ。世界の大国は、平和を維持するべく、1920年に「国際連盟」を発足させ、22年には史上初の「国際軍縮会議」を開くなど、戦争そのものをなくそうとした。
だが、この"平和秩序"は、ナチス・ドイツの台頭によって、もろくも崩れ去り、第二次世界大戦が起きてしまった。経営学者・ドラッカーは、自著でこう指摘している。
「もし、善意や熱意、条約によって(戦争が)なくせるものならば、とうの昔に戦争はなくなっていたはずだった。しかし、国際連盟、集団安全保障、集団軍縮による戦争の追放は失敗せざるをえなかった。対立する利害に調和をもたらすという民主主義の信条を国際関係に適用しようとしてみても、もたらされたものは、『国際的な』階級闘争の激化だけだった」(『経済人の終わり』)
第二次大戦の教訓は、「軍縮が必ずしも平和をもたらすわけではない」という点なのだ。
軍縮につきまとう大国の論理
さらに軍縮には、およそ平和的とは言えない「狙い」が潜むこともある。
戦前の日本は、国際軍縮会議である1922年の「ワシントン会議」や、30年の「ロンドン海軍軍縮会議」に参加し、軍縮での"国際貢献"を果たしてきた。だが、これらの条約により、日本は、欧米諸国に比べて、戦艦や潜水艦などの保有量に厳しい制限が課せられた。
つまり欧米の目論見は、日本が欧米に歯向かえないようにするための軍縮であって、とても平和的とは呼べないものだった。こうした差別的な扱いは、有色人種の蔑視といった側面があったためだろう。
中国・北朝鮮問題に対応すべき時
「軍縮すれば、戦争がなくなる」「核兵器をなくせば、平和になる」などというほど、世界は単純な論理で動いていない。
むしろ今、世界が対峙すべきなのは、中国・北朝鮮問題だ。中国は、軍事費を増やし続け、多くの国々から批判を受けてもなお、南シナ海にある岩礁を埋め立て、地対空ミサイルなどを配備するなどしている。北朝鮮も、度重なる経済制裁を潜り抜け、今年1月に核ミサイルの「小型化」に成功した。両国の増長ぶりは目に余るものがある。
そのような危険な国際情勢に対し、日本がなすべきは軍縮ではない。抑止力を高めて、「最悪の事態」に備えることだ。その中で、「自衛としての核装備」を検討せざるを得ない時期に来ている。
(山本慧)
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