国連の特別報告者を務め、米カリフォルニア大学教授でもあるデービット・ケイ氏(画像は同大学HPより)。

国連人権理事会のデービッド・ケイ氏がこのほど開いた、来日時の会見で、日本政府のメディア規制について発言したことは、本欄でも伝えた。

( http://the-liberty.com/article.php?item_id=11211 )

今回は、同じ会見で、慰安婦問題に触れた点について紹介したい。

ケイ氏は、日本の歴史教科書から慰安婦問題の記述が削除されつつあることを指摘し、日本政府が介入して政治圧力をかけているのではないか、などと述べた。

これは、安倍政権の歴史認識が、教科書検定の審査に影響したという見方を示したもので、ケイ氏は「政府の圧力は慰安婦のような重要問題の議論にも悪影響を及ぼしている」と指摘。「政府の介入で教科書が第二次世界大戦の犯罪の実情を扱わないことは、国民の知る権利と過去のことを把握し理解する能力に悪影響を及ぼす」などとした。(4月20日付産経新聞)

ケイ氏は、教科書から慰安婦問題の記述が削除されたことに対し、政府の介入と批判している。それは、「慰安婦は強制連行された」「性奴隷として扱われた」ということを前提にしているからだろう。

だが、そもそも、その前提が間違っている。「強制連行」「性奴隷」は、つくり上げられた嘘である。

悪いのは、問題を曖昧にしてきた日本政府

ただ、アメリカ人のケイ氏が誤解するのも仕方がない面もある。

昨年12月末、慰安婦問題に関する日韓合意が結ばれ、日本政府は、韓国政府が設立する元慰安婦を支援するための財団に、10億円の資金を拠出することに決めた。

当時、海外メディアも「日本政府は、女性の性奴隷化に軍が関与していたことを認めた」(The Guardian紙)、「岸田外相は記者団に対し、『日本は1993年の河野談話を始め、これまで何度も戦時中の性奴隷に関する責任を認めて謝罪して来た』と語った」(BBC Web版)など、明らかに、「日本政府が慰安婦の強制連行を認めた」と報じている。

こうした誤解を与える原因は、やはり、問題の本質を論じず、曖昧にし続けてきた日本政府にあると言っていい。たとえ、ケイ氏の指摘が、誤解に基づくものでなく、意図的だとしても、明確な反論ができない状況を、日本政府は自ら打開すべきだ。

やはり、「河野談話」の撤回が必要

安倍晋三首相は、昨年8月の「安倍談話」で、事実上、慰安婦の強制連行を認めた「河野談話」、侵略戦争であることを認めた「村山談話」を踏襲し、戦後の自虐史観を引き継いだ。

こんな状態のままでは、ケイ氏が、間違った情報を国連人権理事会に報告しても、日本側は反論できない。

結局、首相が公の場で、明確に「そんな事実はなかった」「河野談話を撤回する」と表明しない限り、この問題は永遠に批判され続けるだろう。歴史の見直しは、まず首相から、だ。(貴)

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