いわゆる「従軍慰安婦問題」について、日本の女性差別問題を審査する国連女子差別撤廃委員会は7日、「多くの課題が残されていて遺憾」とする報告書を発表。日本に対し、元慰安婦への賠償と謝罪を求める「最終見解」を出した。

報告書には、「性奴隷」という表現が盛り込まれなかったものの、これまで通り、日本の立場を追及するトーンに終始。「日本の指導者や政治家が、慰安婦を傷つけるような発言をしない」「教科書に慰安婦問題を記述する」ことなどを勧告している。

日本の反論は通用せず

この報告書に先立つ2月、日本政府は、「政府が発見した資料の中には軍や官憲による、いわゆる強制連行を確認できるものはなかった」と反論したが、効果的なものになり得なかった。菅義偉官房長官は8日の記者会見で、「最終見解は我が方のコメントが十分反映されていない。ジュネーブ代表部から極めて遺憾である旨を強く申し届けた」と述べた。

政府としては慰安婦の事実関係を説明したつもりだが、その一方で、河野談話や日韓合意を継承する立場をとっている。歴史の真実を発信しておきながら、強制連行を事実上認め、元慰安婦に10億円を拠出するというやり方が、国際社会に通用するはずがない。

日本政府の主張が、今回の勧告に反映されること自体を期待することがおかしい。河野談話見直しの必要性が一層増したと言える。

ダブルスタンダードの国連

とはいえ、国連の対日批判にもダブルスタンダードがある。

国連は1990年代初頭から、慰安婦問題をやり玉にあげているが、アメリカなどの戦勝国に存在した慰安婦については一向に問題視しない。仮に、慰安婦問題を人権問題にすり替えたとしても、明らかにフェアではなく、敗戦国・日本を裁くために動いていると言わざるを得ない。

国連は戦勝国がつくったもので、その歴史観は「日本=悪」の図式だ。国連を丸ごと改革するという気概がなければ、中途半端な反論に終わってしまうだろう。東京裁判開廷70年の今年を契機に、日本政府や国民は、正しい歴史観を取り戻す機運を盛り上げるべきだ。

(山本慧)

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