法務省は18日、死刑囚2人の刑を執行したと発表した。そのうち1人は、川崎市で2009年に3人を殺害し、裁判員裁判で死刑判決を受けた津田寿美年死刑囚。裁判員制度が始まって以来、市民が審理に加わって決まった死刑が初めて執行されることになり、改めて裁判員制度の在り方に注目が集まっている。

民間人が裁判の審理に参加する裁判員制度

裁判員裁判とは、刑事裁判において民間人から事件ごとに選ばれた裁判員が裁判官とともに審理に参加する制度。2009年に始まった。アメリカ等の陪審員制度に倣った制度だが、アメリカでは市民の陪審員が有罪か無罪かを決め、その刑の大きさは専門家である裁判官が決めるのに対し、日本の裁判員制度は「死刑」「懲役○年」など刑の重さの決定にも裁判員の判断が加わるという特徴がある。

死刑を決定した裁判員の苦悩

津田死刑囚の判決を担当した裁判員は、判決後に次のように語っていた。

「死刑執行のニュースを見るたびに、どの死刑囚の死刑が執行されたのか気が気でない」「判決後も『これで正しかったのか』と悩んでいる裁判員はたくさんいる。死刑判決に関わった人の心の負担はなおさら大きい」こうした実態があるにもかかわらず、裁判員の負担の軽減や心のケアなどの課題は未解決のままだ。

また、裁判員の経験者同士が交流する団体は2014年2月、「裁判員が死刑という究極の判断を求められる一方、死刑執行に関する情報が少ない」として、死刑執行の詳細を明らかにし、国民の議論を促すよう求める要望書を法務省に提出した。このように、初の死刑執行をきっかけに、裁判員制度の必要性や改善のための議論を求める声が高まっている。

問題だらけの裁判員制度は見直されるべき

プロの裁判官ではないため、十分な理解がない中で「死刑」という究極の判断をしなければならない裁判員の苦悩は、その死刑が執行された時に極限に達する。さらに裁判員候補者の6割が裁判員を辞退するという実態もあり、「裁判に市民が参加することで民主的な裁判を行う」という当初の目的は事実上果たされておらず、制度自体が形骸化してきている。

法律の素人がプロと一緒に裁判にかかわり、量刑にまで巻き込むことは、プロの裁判官が本来の仕事をしていないと言わざるを得ない。さらに、審理のために何度も裁判所に足を運ばせるこの制度は、民間の仕事の妨げになるケースが多い。メリットよりもデメリットの方が多い裁判員制度は、早々に見直されるべきではないか。(真)

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