アメリカ不在のAPECで日中が綱引き 台湾に中国の触手が伸びる
2013.10.09
インドネシア・バリ島で開催されているアジア太平洋経済協力会議(APEC)では、オバマ米大統領が財政問題への対応のために会議を欠席したことで、日本と中国の主導権争いの場となっている。
中国の習近平国家主席と李克強首相は、APECに合わせる形で東南アジア諸国を公式に訪問。習氏はインドネシアとマレーシアを、李氏はブルネイとタイ、ベトナムを訪れた。中でも習氏は3日にインドネシアの国会で演説し、「他国はこの海域(南シナ海)の多様性を認めるべきだ」と述べ、アメリカを牽制している。オバマ氏もAPECに合わせてインドネシア、ブルネイ、マレーシア、フィリピンを訪問する予定だったが、結果的にはフィリピンを除く各国に中国首脳が代わりに訪問する形になっており、中国はまるで"アジアの盟主"のように振る舞っている。
一方の日本は安倍晋三首相が中国包囲網づくりに励んできており、TPP交渉にも積極的に取り組んでいる。オバマ大統領の外遊見送りで年内妥結が危ぶまれる中、日本側は従来「聖域」と位置付けてきた分野でも譲歩する姿勢を見せるなど、交渉をリードしようとしている。
アメリカ不在の東南アジアで日中の綱引きが激化する中、中国側は今回、台湾への外交攻勢に出た。中国が来年に北京で開催するAPEC首脳会議に、政治対話に応じることを条件として、台湾の馬英九総統を招待すると示唆したことが明らかになったのだ。台湾は、「チャイニーズ・タイペイ(中華台北)」としてAPECの正式メンバーではあるものの、首脳会議への総統の出席は、中国の反対でこれまで実現していない。
この招待の裏には中国の"台湾統一"への思惑があるのだろう。2008年に「親中」の馬英九政権が誕生すると、中国は台湾を経済的に吸収する戦略を取り、貿易や観光などで中台関係を徐々に改善させた。経済的な結びつきを背景に、中国は本格的な中台統一に向けて、今まで経済のみだった両国間の対話を政治レベルに引き上げようとしている。APEC首脳会談への誘いも、こうした戦略の一環と見られる。
これまでの安倍外交の中国包囲網づくりでは、東南アジアが主戦場となっているが、台湾の大切さも忘れるわけにはいかない。中国が台湾を呑み込めば、日本の国防上の脅威は決定的になるだろう。台湾の独立を守るために、日台関係を強めていく必要がある。(飯)
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