中国が弾圧を強める「5つの自由」
2011.05.10
米国に本拠を持つあるNPOの北京事務所は過去8ヵ月間、地元の徴税機関による立ち入り調査を1度しか受けたことがなかった。ところがここ3週間は、3回も立ち入り調査を受けたという。
この一例が示すように、中国当局は2月のアラブ革命以来、国内の欧米関連組織と中国人の接触に関する取り締まりを著しく強化している。9日付米紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンの記事から概要を紹介。
1)中国指導層の間では今、欧米人の自由な考え方が国内で影響力を増すことへの恐怖(fear)が高まっている。2月から4月にかけて、中国の米国大使館が企画した文化フォーラム、学校行事参加、中国人の米大使館への訪問企画など少なくとも60件がキャンセルされた。ヨーロッパからのキリスト教伝道団も同じ目に合っている。
2)中国教育省は国外に旅行する中国人の学者たちに対し、海外では「反中」的な活動に参加したり、民主主義を奉ずる団体と関わりを持ったりしないように警告している。
3)特に集中的に取り締まられているのは、中国内にある外国人グループのうち、外国政府と強いつながりを持ち、言論の自由やネットの自由(Internet freedom)を広げようとしているグループである。
4)2月には中国政府のサイトに、外国人が参加する会議の開催について新たなルールが出た。それによれば、財政上の理由から会議の人数は100人以下とし、当局の許可なしに「重要な」外国人ゲストを招いてはならないという。あるアメリカ人は「財政上の理由かどうか怪しい。政府にとって不都合な思想を持っている外国人と中国人が顔を合わせて話す機会をできるだけ少なくさせたいのでは」と話している。
5)中国当局は、在中国の外国人ジャーナリストの自宅訪問や尾行を行い、報道内容への監視を強めている。
1)は信教の自由、2)は学問の自由、3)は言論や表現の自由、4)は集会の自由、5)は報道の自由と関係がある。要するに中国政府はあらゆる「自由」への弾圧を強め、自国内にジャスミン革命が起きることを防ごうとしているのだ。「米国は中国でもアラブ革命のような民主化革命を起こそうとしているのでは」と口に出す中国政府高官もいるというが、他国の思惑を気にする前に、自国民の自由と幸福についてもっと心を砕いてはどうか。(司)
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