米保守層で強まる中露分断論 「G7は、中国に圧をかけロシアとは和解すべき」
2019.08.26
《本記事のポイント》
- 米保守層からロシアとの和解を呼びかける声
- かつての"敵"ロシアより、中国の方が脅威であると認識
- 日露平和条約を結び損ねた日本政府は、「決められない外交」からの卒業を
日米欧の主要7カ国による首脳会議「G7サミット」が、フランスのビアリッツで24日夜(日本時間25日未明)に開催された。
開催に先駆け、ドナルド・トランプ米大統領はロシアを加えた「G8」体制への復帰を提案した。
しかし、英独仏など欧米諸国は反対し、ロシア側も「G20を重視する」と気のない態度。それどころか、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はG7サミットの前日に、アジア太平洋地域に中距離ミサイルを配備したいとするアメリカをけん制するなど、日米欧とロシアとの亀裂は深刻化している。
その一方で、ロシアと距離を縮めているのが中国だ。
ロシアはこのほど、中国の華為技術(ファーウェイ)を自国の5Gネットワークに採用することを決定した。最近は、中国との海軍合同軍事演習も活発化させている。孤立するロシアを、中国が囲い込んでいるかのようだ。
アメリカで中露分断を求める声
そんな中、「ロシアと和解して中露を分断すべきだ」という声がアメリカ国内で挙がっている。
ロナルド・レーガン政権の特別顧問を務め、現在はワシントンに本部を置くシンクタンク「ケイトー研究所」の上級研究員として執筆活動を行うダグ・バンドウ氏は、米保守メディア「ザ・ナショナル・インタレスト」への寄稿でこう指摘した(23日付)。
「実際、(トランプ氏の)ロシアを(G7に)追加するというのは驚くほどよいアイデアだ。2014年にG7から除名されたウラジーミル・プーチン大統領は、今なお自由主義的な西側の民主主義者に自らを変身させていない。しかし、彼を(欧米諸国の)クラブから外し続けることによって、自由主義に転向させることはできない。ロシア政府と仲たがいすることは、我々西側の自由主義者にとって、より独裁的で強大で危険な敵である中国、つまりロシアが接近しつつある国の利益にしかならない」
「プーチン氏をクラブに招待し直すことは、東欧の平和と安定を達成するため、そして、中国の囲い込みからロシアを引きはがすためのプロセスの一部であるべきだ。歩み寄りのみによって、(ロシアとの)分裂が恒久的なものになるのを避けることができる」
バンドウ氏は、ロシアと和解するための手段として、北大西洋条約機構(NATO)の拡張停止やウクライナ・キエフへの軍事援助の制限、ロシアへの経済制裁の停止などを挙げている。
その上で、「G7のメンバーは、習近平国家主席と中国に対し、人権と国際基準を尊重するよう圧力をかける共通政策をつくるためにフォーラムを活用すべきだ」と論じた。
バンドウ氏が寄稿した「ザ・ナショナル・インタレスト」のCEOを務めるディミトリ・サイムズ氏も同サイトで、欧米諸国は冷戦思考を抜け出し中露を分断すべきだと指摘している(8日付)。
かつての"敵"ロシアと和解し、より強大な敵である中国との対決に備えるという、米保守層による戦略の転換がうかがえる。
日本が果たすべきだった「橋渡し」
これほどまでに中露が接近してしまった原因は日本にもある。
安倍晋三首相は、プーチン氏と26回も会談を重ねながら平和条約を締結できず、欧米とは一線を画した日本独自の外交方針を明示することもできないまま、「決められない外交」でプーチン氏からの信頼を失ってしまった。
もし6月の日露首脳会談で無条件の平和条約を結ぶことができていれば、日本が橋渡し役となり、ロシアを民主主義陣営に引き戻せたはずだ。しかし、26回ものチャンスを逃してしまった今、トランプ氏に橋渡しを託すより他ない。
日本としては、アメリカで起こりつつある中露分断の動きに歩みを合わせるとともに、「決断できない外交」からの卒業を急ぐべきだ。
(片岡眞有子)
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