「大崎事件」再審決定か 目的のために手段を取り違えてはならない
2017.07.06
1979年に鹿児島県大崎町で起こった「大崎事件」で、殺人罪などの罪に問われ、服役していた原口アヤ子さん(90歳)が、裁判のやり直しを求めた3度目の再審請求に対し、鹿児島地裁がこのほど、再審を認めた。
これに対して、鹿児島地検は即時抗告。福岡高裁宮崎支部が、裁判をやり直すかどうかを改めて判断する。
大崎事件とは
大崎事件とは、当時42歳だった中村邦夫さんが殺害された事件。今回再審を要求した原口さんは、中村さんの義理の姉にあたる。
判決によれば、原口さんは、被害者の中村さんの日頃の生活態度に不満を持っており、親族の三人と共謀し、中村さんをタオルで絞め殺したとのこと。しかしその証拠は、他の共犯者らの自白のみであった。
今回、再審が認められた理由は、共犯者らの「自白」が、捜査機関によって誘導された疑いがあるためだ。
実際、共犯者である原口さんの元夫(故人)は出所後に、「警察官の取り調べが厳しくて、言ってしまった」と原口さんに対して謝ったのだという。
原口さんは逮捕されてから38年間、無罪を訴え続けており、今回の再審決定は悲願への第一歩となった。
警察の捜査のあり方
今回の事件に限らず、様々な場面で、警察の捜査に関する問題点は耳にする。
例えば、1988年に起こったリクルート事件で逮捕された江副浩正氏(故人)は、取り調べの際に、警察が机を叩いたり、土下座を強要させたりしたという。目を開けた状態で鼻と口がくっつくほど壁に向かって立たされ、一日中怒鳴られ続けたこともあった。
また、今年の3月には、警察が捜査の際に、裁判所の令状なしでGPSを使った捜査をしていたことが問題となり、最高裁で違法だという判決がなされている。
罪を犯した人を野放しにしてしまうような事態を防ぐために、警察による厳密な捜査が行われる必要はあるだろう。
しかし、「悪を糺す」という目的が正しくても、手段を間違えてはならない。犯人を捕まえるためなら、どんな捜査も許されるとなれば、国民の自由を狭めることになる。
法を犯した存在を取り締まる警察は、国民の模範的存在であるべきだ。目的においても手段においても正しい考えを持って職務にあたる必要がある。(志)
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