厚生労働省が、介護の分野で働く外国人の受け入れを増やす案をまとめたことを、24日付各紙が報じている。一定の日本語能力と専門知識の条件を満たす外国人に対し、働きながら日本で技能を学ぶ制度を整えるというものだ。現在は、経済連携協定(EPA)提携国のインドネシア、フィリピン、ベトナムからの候補者を受け入れている。

少子高齢化が進む今、より多くの看護師や介護労働者が必要とされている。もちろん、看護・介護に限らず、他のあらゆる分野でも労働力の不足が懸念されている。日本が長期的に経済成長していくためには、やはり、外国人労働者や移民を積極的に受け入れる必要がある。

しかし、外国人労働者や移民の受け入れに対する日本人の反応はさまざまだ。外国人労働者が、日本の技術やサービスを学び、スキルを高めながら、日本という国に貢献してくれると好意的な受け止め方がある一方、外国人労働者や移民の増加によって、「日本の平和や安全、調和が乱される」「日本固有の文化が破壊される」と懸念する人もいる。

欧米諸国の移民政策の失敗や失業率・犯罪率の上昇などの問題を見ると、その心配も理解できる。しかし、日本には本来、異質なものを受け入れる寛容さと、それを自国の文化に取り込む力がある。

例えば、聖徳太子の時代には、日本神道をベースにしながら、仏教や儒教の教えを見事に取り込んだ。また、日本語には、古代中国文字の漢字が取り入れられてきた歴史があり、江戸時代末期に伝わった英語も、的確な日本語に翻訳されて導入された他、「バイオリン」「ピアノ」など外国語の音をそのままカタカナにして日本語として使っている言葉もある。

これらの背景には、異なる宗教や文化を、尊重し、吸収していく精神や、深い理解があると言えるのではないか。

今年は年初から、移民の多いフランスで衝撃的な事件が起きた。パリのシャルリー・エブド紙がイスラム教を冒涜する風刺画を載せたことが引き金となり、テロ事件が起きた。また、フランス国内でユダヤ人に対する暴行の件数が年々増加し、ユダヤ人がフランスから脱出している(15日付本欄参照)。

宗教・民族間の紛争解決には、相互理解が必要だ。双方の根底に、異質なものを尊重する精神があってこそ、それは可能になる。また、人間は何度も生まれ変わり、その都度、国や民族を変えてさまざまな人生経験を積んでいるという霊的な真実を知れば、他の宗教や民族に対して寛容になることができる。

今後、日本で学び、働き、住む外国人は増加していくだろう。日本は、他の宗教や異文化を受け入れて、それを独自の文化として吸収してしまう強みを持っている。もう一段、精神的な開国をすることができるはずだ。(真)

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