中国の習近平・国家主席は、昨年10月にアジアを歴訪した際、「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」の構想を明らかにした。来月に北京で行われるAPEC首脳会談では、このAIIBの設立に弾みをつけるものと思われる。

AIIBは中国が最大5割の出資比率を占め、日本、米国、インドを外した形で賛同国に出資を募ってきたため、日米主導のアジア開発銀行(ADB)に対抗する試みと見なされている。その役割も、これまでADBが担ってきたアジア諸国のインフラ整備のための投資を掲げている。

この背景には、欧米が主導権を持つ国際通貨基金(IMF)や日本が主導するADBに対抗して、中国も自らが主導する国際金融機関を持ち、新しい国際金融のルール作りを主導したい意図がある。

実際、ADB(資本金1650億ドル)の出資比率は日本と米国がそれぞれ15%を負っており、この2カ国が最大の出資国であるため、中国が一国で5割を占有できる自国中心主義的なAIIBとは根本的に性格が異なる。

現在、このAIIBに関しては、中国の脅威を感じているベトナム、フィリピンなどのアジア諸国だけでなく、中東の富裕国も含めて21カ国が参加の意思を示している。

今後の経済成長が期待されるアジアには約80兆円の資金需要が見込まれている。ここに中国が覇権拡大の意図を持って入り込み、東南アジアへの影響力を拡大すれば、本来、自由主義経済が目指すべき共存共益の理想が脅かされる可能性が高い。

また、AIIBは投資する際の審査基準が不透明なので、不正や乱開発、中国海軍の寄港地への援助などに使われる危険性が日米などから指摘されている。

中国は、韓国にもAIIBへの参加を呼び掛けていると言われている。韓国は歴史問題で中国と共闘を続けているが、経済面でも依存する関係が深まれば、中国の覇権主義に組み入れられる危険は一層高まるだろう。

韓国を含めて、東南アジアが中国側になびくか、日米側につくかという大きな瀬戸際が来ている。経済面と安全保障面の両面から、日本は東南アジアの外交戦略を再構築しなければならない。(遠)

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