アベノミクスの3本の矢の一つである成長戦略の一環として、医療分野を掲げる政府は、18日、「健康・医療戦略参与会合」の初会合を開催した。製薬や医療機器分野などの民間有識者11人が菅官房長官に具体策を進言し、それを元に政府は6月に「健康・医療戦略」をまとめる。19日付日経新聞などが報じた。

政府は医療を成長産業として育てるため、iPS医療などの再生医療の増進や、医療機器の審査期間短縮などを考えている。今回の会合では特区制度の拡充や、医療サービスの海外進出などに意見が出た。

医療機器の輸出では欧米や韓国が日本に先んじて成功しているが、それに追いつくためには、日本式医療まるごとの輸出が効果的だというので、政府は2011年から「日本式医療の輸出」を進めている。海外に医療拠点をつくれば、そこを足掛かりにして医療機器を売り込む機会を増やせるというのが、その理由の一つだという。

まだ動き出したばかりだが、日本の医療の海外進出には「日本の医療の総合的な質は世界一」という追い風が吹いている。WHOの調査では、日本の乳児死亡率の低さや平均寿命は世界トップクラスであり、また、2006年のカナダの非営利調査機関による先進国医療制度ランキングでは16カ国中1位。世界の国々が、医療先進国の日本をお手本にしたくなるのはごく自然なことだ。

今年2月、モスクワの日本大使館で行われた日本のがん治療セミナーに、ロシアの医療関係者が180人詰めかけ、診療の待ち時間や費用についての質問が次々に出た。ロシアは旧ソ連時代に導入されたレントゲンを今も使うなど、あまり医療水準は高くなく、近代化を目指しているという。日本の医療はロシアで、「治療技術が高く、看護は丁寧で手厚い」と評価が高い。こうした中で、ロシアの医療機器更新時の受注競争に日本企業も近年、善戦しているという。

再生医療も大いに期待できるが、日本の成長と世界の健康の増進のために、医療の国際展開にも頑張ってもらいたいものである。(居)

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