米大統領選挙で遊説するオバマ大統領(7月10日、アイオワ州)写真:AP/ アフロ

2012年9月号記事

「チェンジ」を合言葉にオバマ大統領がホワイトハウスに乗り込んでから、間もなく4年。 オバマ氏の1期目を総括すれば、そこに浮かび上がってくるのはアメリカの福祉国家路線への転換である。

それを印象付けたのが、6月28日に最高裁が下した、保険改革への実質上の合憲判決だ。

国民に健康保険への加入を義務付け、違反者への罰金も盛り込んだ通称「オバマ・ケア」は、オバマ氏が1期目の最大の成果と位置付ける政策だ。国民皆保険がないアメリカでは、虫歯の治療でも法外な額になる医療費が問題視されていた。

オバマ・ケアには、どんなに貧しい人でも保険に加入できるようにする意図があったが、「自由」というアメリカの基本精神を巡る議論を引き起こした。つまり、法律が定める保険の強制加入は、国民が持つ商行為の自由を制限するもので、憲法違反ではないかという訴訟である。

最高裁はオバマ・ケアに合憲判決を下したが、これでオバマ氏が敷いたアメリカの福祉国家路線が固まった と言える。国民の自由を制限しかねない政策に最高裁がゴー・サインを出したのは、米司法の左傾化をうかがわせる出来事ともなった。