2012年6月号記事
新シリーズ 有識者インタビュー
未来を創る
日銀の擬似インフレ目標にだまされるな
上武大学教授
田中秀臣氏
(たなか・ひでとみ)
1961年生まれ。経済学者。専門は経済思想史、日本経済論。リフレ派の代表的論者。主な著書に『デフレ不況』(朝日新聞出版)『日本建替論』(共著、藤原書店)など。
歳出を減らして増税をするという財政再建をすれば経済はよくなるというワシントン・コンセンサスと呼ばれる政策スタンスがあります。かつてIMF(国際通貨基金)や米財務省を中心に打ち出されましたが、今では、不況の時には逆に財政支出を増やした方が、かえって財政再建には役に立つという考えに変っています。IMFのチーフ・エコノミストのオリビエ・ブランシャールなどがそう訴え始めています。
なぜ変わったか。典型的なのがユーロ圏です。ワシントン・コンセンサスに基づいて、増税や金融引き締めで財政再建を図ってみたら、ギリシャ、ポルトガル、イタリアと次々と財政がさらに悪化してしまったのです。
つまり、 この1年ほどで、財政再建至上主義は否定されている のですが、この変化についていけない国が一つだけあります。わが日本です。